「国の制度と何が違うのか」から整理する

千葉県内の中小企業・個人事業主が補助金を検索すると、「国のもの」と「千葉県独自のもの」が混在してどちらから手をつければいいか迷う。まず構造を整理しておく。

補助金は大きく3層に分かれる。①経産省・厚労省が全国一律で運営する「国の制度」、②千葉県が単独の予算で運営する「千葉県独自の制度」、③市区町村が独自に設ける「市町村制度」。本記事では②に絞って説明する。

国の主要制度との比較を先に示す(2026-10-08時点)。

比較軸国の制度(例:ものづくり補助金)千葉県独自制度(例:成長促進補助金)
競争対象全国の中小企業(採択率30〜50%程度)千葉県内のみ(競争が絞られる)
補助上限額最大1,250万円〜2,500万円(枠による)最大3,000万円(2024〜2026年の成長促進補助金)
補助対象の方向性設備・IT・広報費など幅広い賃上げ・脱炭素・デジタル人材に集中傾向
同一経費の二重申請不可不可(国採択経費との重複NG)
申請窓口全国統一ポータル、商工会・商工会議所経由千葉県専用ポータルまたは産業振興センター

この県の予算編成サイクルだと、秋の補正予算や6月の定例議会後に新制度が加わることが多い。令和8年度は8月の豪雨対応として「被災小規模事業者再建支援事業」が11月中旬から新設される予定で、今年度の補助金全体像はまだ変化する余地がある。

2026-10-08時点でいま申請できる制度

受付中の制度を締め切りが近い順に並べる。「締め切りが近い=急いで動く必要がある」ではなく、「締め切りが近い制度を確認してから、余裕のある制度に動く」という読み方をしてほしい。

① サプライチェーン再構築海外展示会出展支援事業補助金(第3回締切:2026年10月9日 17時)

米国の関税措置や地政学リスクで輸出先を分散したい事業者を対象に、令和8年度から新設された制度。本記事公開時点で締め切りは翌日だが、第4回以降の募集も予定されているため参考として載せておく。

  • 補助率:1/2以内(小規模事業者は2/3以内)
  • 上限額:200万円(下限20万円)
  • 条件:「パートナーシップ構築宣言」への登録が必須
  • 問い合わせ:商工労働部経済政策課(043-223-2745)

市場開拓助成(後述)と目的が似ているが、こちらは上限額が200万円と倍で、「海外市場の新規開拓」に限定している。国内展示会への出展には使えない点に注意。

② 市場開拓助成(2026年10月1日〜10月30日)

国内外の展示会出展費用を補助する制度で、年2回(4月・10月)の募集がある。千葉県産業振興センターが窓口。

  • 補助率:1/2以内(小規模事業者は2/3以内)
  • 上限額:100万円(下限10万円)
  • 対象:千葉県内に事業所を持つ中小企業者・個人事業主
  • 対象経費:出展料、輸送費、通訳費など
  • 問い合わせ:千葉県産業振興センター(047-426-9200)

国の「小規模事業者持続化補助金」の広報費(展示会出展費)と経費が重複しやすい。同一の出展費を両制度に申請すると審査で弾かれるため、経費区分を事前に整理しておく。

③ デジタル人材マッチング支援事業補助金(〜2027年1月29日)

デジタル人材を採用した際の人材紹介会社への手数料を補助する。国のIT導入補助金が「ソフトウェア・ツール」の費用を対象にするのとは異なり、「人を採る費用」に特化した設計だ。

  • 補助率:1/2以内
  • 上限額:150万円
  • 対象:千葉県内に事業所を持つ中小企業者・個人事業主
  • 対象経費:人材紹介会社への紹介手数料

④ 事業承継支援助成金(随時受付)

計画策定費、企業価値算定費用、後継者育成費用、M&A仲介手数料などを補助する。国の「事業承継・引継ぎ補助金」が設備投資まで幅広く対応するのに対し、こちらは「支援機関への費用」に絞った構造で使いやすい。年度末(3月31日)まで随時受付。

  • 補助率:1/2以内
  • 上限額:50万円
  • 問い合わせ:商工労働部経済政策課

⑤ 次世代自動車導入促進補助金・充電設備設置促進補助金(〜2027年3月)

電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池自動車の導入費と、充電設備の設置費を補助。対象は事業用車両および観光宿泊施設等。受付は2027年3月まで期間があるが、予算枠に達し次第終了する。

⑥ 業務用設備脱炭素化促進事業補助金(診断費のみ〜2026年12月11日)

省エネルギー診断に基づく設備投資を補助する制度。設備投資部分は10月7日に受付を終えたが、診断費(専門家コンサルタントへの費用)は12月11日まで申請できる。来年度の設備申請に向けて今から省エネ診断を入れておくことが可能。

  • 補助率:診断あり 1/2以内、簡易診断 1/4以内
  • 上限額:1,000万円(設備投資・診断費合算の場合)

⑦ 被災小規模事業者再建支援事業(2026年11月中旬〜予定)

令和8年8月の千葉豪雨で被災した小規模事業者を対象に、設備・什器の復旧費用を補助する制度。募集は11月中旬から予定されている。

  • 補助率:2/3以内
  • 上限額:100万円(下限10万円)
  • 対象:令和8年8月の千葉豪雨で被災した小規模事業者

申請の順番:何を先に取ると何が取れなくなるか

補助金申請で最も多い失敗は「採択前に発注してしまった」と「同じ経費を複数制度に申請してしまった」の二つだ。この順番を先に決めておかないと後から取れる制度の幅が狭まる。

  1. 設備投資系は「国→県」の順で計画を立てる。ものづくり補助金(国)で採択が取れた後、残った別経費に千葉県の成長促進補助金や脱炭素補助金を充てるのが標準的な動き方。同一経費の重複申請は両方不採択になるリスクがある
  2. 展示会・販路開拓は国と千葉県を並行して検討できる。ただし同一の出展費を持続化補助金(国)と市場開拓助成(県)に重複させてはいけない。出展先が別であれば別々に申請可能
  3. デジタル人材採用費はIT導入補助金と目的が違うため、ほぼ同時に申請できる。IT補助金はソフト購入費、デジタル人材マッチング補助金は紹介手数料と対象経費が明確に分かれている
  4. 事業承継系は国の補助金審査を待たずに進められる。対象経費の区分が異なるため競合しにくい

議会会期前の動きを見ると、千葉県の成長促進補助金は6月以降に次弾の公募が出ることが多かった。年度当初(4〜5月)に国の制度に申請し、採択通知が届いた7〜8月頃に県の制度に動くのが現実的なスケジュールになる。

よくある不採択の理由

過去3年の優先度から見えるのは、不採択申請書に共通するパターンだ。審査側は毎回同じ指摘をしている。

  • 補助事業計画が抽象的:「生産性を向上させたい」だけでは通らない。具体的な設備名・型番・金額・導入後の数値目標(生産量・コスト削減額)が必要
  • 賃上げ要件の根拠が薄い:千葉県の成長促進補助金は賃上げを行う事業者向けの設計。賃上げ計画の数値(現在の平均賃金・目標値・実施時期)を具体的に書かないと要件不足になる
  • 対象外経費の計上:「補助対象経費一覧」に載っていない費用を見積書に含めると審査落ちになる。見積書を業者に依頼する前に対象経費の範囲を確認する
  • 添付書類の漏れ・期限切れ:印鑑証明(有効期限3ヶ月)・決算書・納税証明の漏れが多い。年度をまたいだ申請では期限切れに注意
  • 採択前発注:交付決定通知を受け取る前に発注・契約・支払いを行った費用は補助対象外。これは取り返しがつかない失敗になる

過去の制度(次年度の見通し)

現在募集終了しているが、次年度以降の公募継続可能性が高い制度を記録しておく。

中小企業成長促進補助金(第1〜4弾、第4弾は2026年8月21日で受付終了)

千葉県が令和6〜8年度にかけて4回にわたって実施した設備投資補助金。補助上限3,000万円(小規模事業者枠は500万円)、補助率1/2で、賃上げ・省力化・高付加価値化を組み合わせた設備投資を支援してきた。第5弾の公募時期は2026年10月時点で未発表。商工労働部経済政策課(043-223-2732)に次回の予定を確認するのが最短だ。

ちば創業応援助成金(令和8年4月30日で受付終了)

創業5年未満の中小企業・個人事業主を対象に最大100万円を補助する制度。次回は令和9年度4月前後が目安になる。

業務用設備脱炭素化促進事業補助金・設備部分(令和8年10月7日で受付終了)

省エネ機器への設備投資を最大1,000万円(診断あり・補助率1/2)補助する大型制度。来年度も継続する可能性が高い。今年度の診断費申請は12月11日まで受け付けているため、来年度の設備申請に向けて今から動いておく価値がある。

FAQ

国の補助金と千葉県の補助金は同時に申請できますか?

同一の経費に対しては二重計上が禁止されています。ただし、異なる経費・異なる目的であれば複数の補助金を組み合わせることは可能です。例えば、国の持続化補助金で広報費を補助し、千葉県の市場開拓助成で別の展示会出展費を補助するような使い分けはできます。申請前に各制度の「補助対象経費一覧」を照合してください。

個人事業主は千葉県の補助金を申請できますか?

ほとんどの制度で「中小企業者等(個人事業主を含む)」が対象です。ただし「小規模事業者枠」と「中小企業者枠」で補助率や上限額が異なる制度があります。従業員規模(製造業・建設業等:20人以下、商業・サービス業:5人以下が小規模事業者の目安)を確認してどちらの枠に該当するかを確かめてください。

採択前に設備を発注してしまった場合はどうなりますか?

交付決定通知が届く前に発注・購入・工事を開始した費用は、原則として補助対象外となります。見積書を複数業者から取得することは問題ありませんが、発注(契約書への押印)は採択通知を受け取ってから行ってください。

千葉県成長促進補助金(第5弾)はいつ公募されますか?

2026年10月8日時点では未発表です。過去のサイクルでは年度を通じて複数回実施されてきたため、令和9年度中の公募継続は十分考えられます。最新情報は商工労働部経済政策課(043-223-2732)または千葉県のウェブサイトで確認してください。

申請書類の準備が難しい場合、相談できる無料窓口はありますか?

千葉県産業振興センターのチャレンジ企業支援センター(043-299-2907)が相談に対応しています。制度の選び方から書類作成まで支援してもらえます。商工会・商工会議所経由の制度(持続化補助金など)については地域の商工会への相談が早道です。

参考文献