福岡で会社をやっている若林です。2026年に入ってからテレワーク関連のご相談がまた増えてきました。コロナ禍の時とは少し違って「うちは在宅ができてはいるんだけど、補助金を使って本格的にツールを整備したい」というフェーズ。デジタル化・AI導入補助金2026を使ってテレワーク環境を整備しようとした中小企業が、申請の直前になって「あれ、これ申請できへんの?」と気づくパターンが3つに絞られることがわかってきました。
今回はその3パターンを整理します。うちで実際に取った時の話なんですけど、Zoomの申請準備をしていた知人が「プロセス数を数えたら思ったより少なくて補助額が下がった」と落ち込んでいたのを思い出しながら書きます。
前提:デジタル化・AI導入補助金2026のテレワーク関連ツールの基本構造
デジタル化・AI導入補助金2026(IT導入補助金2026)でテレワーク関連ツールを申請する場合、まず確認すべきことが3点あります。
- 対象ツールがITツール検索に登録されているか:ZoomやSlack等でも、IT導入支援事業者が登録している必要があります。Zoom本社が直接登録しているわけではなく、IT導入支援事業者が「自社の提供サービスとして」登録しているものが対象です。
- プロセス数と補助額の関係:通常枠では「インプット・アウトプット・業務プロセス・意思決定」のプロセス区分で4つ以上をカバーするツールが高額補助になります。Web会議単体では対象プロセスが少なくなりがちです。
- 補助対象経費の範囲:ソフトウェア費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費が対象。ハードウェア(PC端末・ディスプレイ・カメラ等)は基本的に対象外です。
公募要領を3回読んでみたら、テレワーク関連で申請する際に引っかかる箇所はこの3点の組み合わせから生まれていることが見えてきました。順番に解説します。
パターン1:Web会議ツール同士でプロセス数が重複して補助額が下がる
何が起きるか
ZoomとSlackを同時に補助金申請しようとすると、ITツール検索上のプロセス区分が重複するケースがあります。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、申請するITツール全体で対象プロセスをカウントし、カバーするプロセス数によって補助額の上限が決まります。
| プロセス数(合計) | 補助額上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 1以上2以下 | 5万円以上150万円未満 | 1/2以内 |
| 3以上4以下 | 150万円以上450万円未満 | 1/2以内 |
| 5以上 | 450万円以上4,500万円以下 | 1/2以内 |
問題は、ZoomもSlackも「コミュニケーション・情報共有」プロセスをカバーするため、両方を申請しても同じプロセス区分として1つにまとめてカウントされてしまうことです。ZoomとSlackの合計費用が50万円あったとしても、カバープロセスが1〜2にとどまると補助上限は150万円未満枠になります。
どう見落とすか
テンプレで時短すると、ありがちなのがITツール検索で個別ツールのプロセス登録を確認せずに「2ツール入れるから2プロセス分」と思い込むことです。しかし、プロセス数はツール数ではなく、そのツールが対応する業務プロセスの区分数でカウントされます。
IT導入支援事業者に「ZoomとSlackを一緒に申請できますか?」と聞くと「できます」と言われますが、「それでプロセス数はいくつになりますか?」まで確認しないと、蓋を開けたら想定より低い補助枠になっていたというケースが起きます。
正しいアプローチ
- ITツール検索で各ツールの「機能(プロセス)」欄を確認:ZoomやSlackがどのプロセス区分に登録されているか個別に確認する
- 重複プロセスを除いた実際のカバー数を計算:コミュニケーション系ツールを複数入れても、対象プロセス区分が1〜2にとどまる可能性がある
- プロセス数を増やすには業務管理系ツールの追加を検討:勤怠管理(労務・HR系プロセス)や経費精算(財務・会計系プロセス)を組み合わせることでプロセス数を増やし、上位補助枠を狙える場合がある
パターン2:Zoom AI CompanionやCopilot for Teamsの「AI機能フラグ」を見落として加点を取り損ねる
何が起きるか
2024年以降、Web会議ツールへのAI機能搭載が急速に進みました。ZoomのAI Companion(会議の自動文字起こし・要約)、Microsoft CopilotのTeams連携、Slack AIの会話要約など、テレワーク系ツールの多くがAI機能を追加しています。
デジタル化・AI導入補助金2026では、AI機能を持つツールを導入する場合に「AI機能フラグ」が設定されたツールを選ぶことで、労働生産性向上への寄与度が高いとして審査上の加点対象になります。しかし、このフラグはIT導入支援事業者がITツール検索に登録する際に設定するものであり、AI機能を持つツールが自動的にフラグ付きになるわけではありません。
典型的な見落とし方
公募要領を3回読んでみたら、AI機能フラグが設定されていることの確認は審査申請書の「ITツール情報」欄に反映されるため、確認を怠ると申請書にAI機能対応と記載できないことがわかりました。実際に2026年に入ってから、「Zoom AI Companionを使っているのに審査書類にAI機能の記載ができなかった」という事例が出始めています。
テンプレで時短すると、IT導入支援事業者から送られてきた「申請するツールリスト」をそのまま使ってしまい、そのツールにAI機能フラグが付いているかどうかを自分で確認しないまま申請することがあります。
確認フローの3ステップ
- ITツール検索で候補ツールの「AI機能」表示を確認:ツール詳細ページに「AI機能あり」のバッジが表示されているかチェック
- IT導入支援事業者に「このツールのAI機能フラグは設定済みですか」を文書確認:フラグ未設定の場合は、事業者に設定申請を依頼できるケースがある
- 3年間事業計画書にAI機能を活用した労働生産性向上の具体的な数値目標を記載:フラグが設定されていても、事業計画書に具体的な活用シナリオと生産性指標がないと審査で評価されにくい
うちで実際に取った時の話なんですけど、AI機能フラグの確認はIT導入支援事業者のシステム上で申請前に確認できます。「ChatGPT連携がある」「AI文字起こしができる」という機能の有無と、「補助金申請システム上でAI機能フラグが付いているか」は別の話です。この区別を意識しておくことが大事です。
パターン3:テレワーク環境整備でPC端末・Webカメラ・ヘッドセットを申請に含めて対象外判定される
何が起きるか
テレワーク環境整備と聞くと、多くの中小企業が「ノートPC・Webカメラ・ヘッドセット・Wi-Fiルーター等のハードウェアも補助金で調達できる」と期待します。しかし、デジタル化・AI導入補助金2026ではハードウェアは原則として補助対象外です。
補助対象経費はソフトウェア費・クラウド利用料・導入関連費(研修・設定費用等)が基本であり、PC端末・スマートフォン・タブレット・プリンター・スキャナ・Webカメラ・ディスプレイ等の「汎用性の高いハードウェア」は対象に含まれません。
「専用端末なら対象では?」という誤解
公募要領に「ITツールの利用に必要な専用端末」が例外的に対象経費に含まれる場合がある、という記述があります。これを読んで「テレワーク専用のPC端末なら対象になる」と考える方が出てきますが、この「専用端末」は特定の業務にしか使えない専用機器(例:POSレジ・産業用タブレット等)を指しており、一般的なノートPCやWebカメラは該当しません。
IT導入支援事業者が「ハードウェアも込みで申請できます」と言っている場合、そのハードウェアが本当に専用端末要件を満たしているかを自分でも公募要領で確認する必要があります。テンプレで時短すると、事業者の案内をそのまま受け入れて申請し、審査の段階でハードウェア経費が対象外として差し引かれるケースが起きています。
テレワーク関連で補助対象になるもの・ならないもの
| 項目 | 補助対象 | 備考 |
|---|---|---|
| Zoom・Teams・Slack等のクラウド利用料 | ○ | 最大2年分(データ連携ツール区分は1年) |
| VPNサービスの利用料 | ○ | IT導入支援事業者経由で登録されている場合 |
| 勤怠管理クラウドの利用料 | ○ | テレワーク管理プロセスとして計上可 |
| IT導入支援事業者の導入設定費・研修費 | ○ | 補助対象経費全体の1/2以内が目安 |
| ノートPC・タブレット | × | 汎用ハードウェアは対象外 |
| Webカメラ・ヘッドセット | × | 周辺機器も対象外 |
| Wi-Fiルーター・NAS | × | ネットワーク機器も対象外 |
| Zoomの有料ライセンス(月額) | ○ | クラウド利用料として計上可 |
ハードウェアを補助対象にしたい場合は、ものづくり補助金の機械装置・システム構築費などの別制度を検討するか、IT導入補助金とものづくり補助金の併用(同一経費への重複申請は不可)を設計する必要があります。
第4次締切(2026年8月25日)に向けた準備チェックリスト
- □ 申請ツールをITツール検索で検索し、登録されているIT導入支援事業者を確認した
- □ 申請ツール全体でカバーするプロセス数をIT導入支援事業者に文書確認した
- □ Zoom・Teams・Slack等のAI機能フラグがITツール検索上で設定済みか確認した
- □ PC端末・Webカメラ等のハードウェアを見積書から除外した
- □ 3年間事業計画書にテレワーク活用による労働生産性向上の数値目標を記載した
よくある質問(FAQ)
Q1. テレワーク用のVPNサービスは補助対象になりますか?
はい、クラウド型のVPNサービスはクラウド利用料として補助対象になります。ただし、IT導入支援事業者がITツール検索に登録したツールとして提供されている必要があります。一般的にはセキュリティ・情報共有プロセスとしてカウントされるため、テレワーク関連ツール(Web会議・チャット)と組み合わせることでプロセス数が増加し、上位補助枠を狙える可能性があります。
Q2. すでにZoomを使っています。新しく契約を結び直す形でないと申請できませんか?
交付決定前に導入・支払い済みのツールは対象外です。現在Zoomを使用中の場合でも、交付決定後に新規契約または上位プランへのアップグレードという形であれば申請できる場合があります。IT導入支援事業者に「既存利用者の切り替えパターン」を確認してください。なお、既存の月額料金の継続支払い分は対象外です。
Q3. 在宅勤務者用のPC端末を補助金で調達する方法はありますか?
デジタル化・AI導入補助金ではPC端末は対象外です。選択肢として、①ものづくり補助金の「省力化・デジタル化枠」で業務効率化に紐づくシステム構築と合わせて機器を調達する、②事業再構築補助金で新しい業態・事業転換の際に設備投資として計上する、③自己資金またはリース・割賦での調達、などが考えられます。テレワーク整備の目的・規模によって適切な制度が変わるため、認定支援機関(商工会議所等)に相談することをお勧めします。
Q4. Slack有料プランとZoomの両方を申請するとプロセス数はいくつになりますか?
ツールによって登録プロセスが異なるため一概には言えませんが、両ツールがコミュニケーション・情報共有プロセス中心の登録であれば、合計でも1〜2プロセスになる可能性があります。より多くのプロセスをカバーするには、勤怠管理・経費精算・文書管理など別カテゴリのツールを組み合わせることを検討してください。具体的なプロセス数はITツール検索の登録内容を確認するか、IT導入支援事業者に見積もりと合わせて文書で確認してください。
Q5. IT導入支援事業者はどうやって選べばいいですか?
ITツール検索で導入したいツール(Zoom・Slack・Teams等)を検索し、そのツールを登録しているIT導入支援事業者の一覧が表示されます。複数の事業者が登録している場合は、①対応プロセス数・登録ツールの種類が自社のニーズに合っているか、②導入実績・サポート体制、③見積書を無料で作成してもらえるか、の3点で比較することをお勧めします。IT導入支援事業者は申請手続きの伴走役でもあるため、「申請後の実績報告まで対応してもらえるか」も確認しておきましょう。
まとめ
テレワーク環境整備でデジタル化・AI導入補助金2026を活用する場合、押さえるべき3ポイントは次のとおりです。
- プロセス数はツール数ではなく業務プロセス区分でカウントされる。Web会議ツール複数を申請しても、プロセス区分が同じなら補助額上限は変わらない。業務管理系ツールとの組み合わせを検討する
- AI機能を持つツールでもAI機能フラグはITツール検索で別途確認が必要。フラグが設定されているかどうかをIT導入支援事業者に文書確認し、事業計画書にAI活用の具体的な数値目標を記載する
- PC端末・周辺機器・ネットワーク機器は補助対象外。ソフトウェア・クラウド利用料・導入関連費に絞って経費を組み立てる
公募要領を3回読んでみたら、テレワーク関連の申請はプロセス設計と経費の切り分けが肝だとわかります。IT導入支援事業者に任せきりにせず、自分でもITツール検索とプロセス数の確認だけはやっておくことをお勧めします。





