朝6時に起きて地元の商店街を散歩していると、最近は「合同会社を作りました」という若い方の看板をちらほら見かけるようになりました。松島です。東北で30年、創業期の方に伴走してきた行政書士です。
合同会社(LLC)は株式会社に比べて設立費用が安く、ここ数年で創業時の法人形態として選ぶ方が増えています。定款認証が不要で登録免許税も6万円(株式会社は15万円)。コスト面のメリットは明確です。
ところが、いざ持続化補助金(創業枠)や日本政策金融公庫の創業融資を申請しようとすると、合同会社だからこそハマる盲点が3つあります。30年の現場で何度も見てきたパターンを、今日は整理してお伝えします。
盲点1:特定創業支援等事業の証明書で登録免許税が「6万円→3万円」になるのを知らない
合同会社の設立で最もよく見る取りこぼしがこれです。
特定創業支援等事業の証明書を取得すると、株式会社の登録免許税が15万円→7.5万円に半減されることは比較的知られています。しかし、合同会社にも同じ軽減措置が適用され、6万円→3万円になることを知らない方が非常に多い。
「合同会社は元々安いから証明書は要らないでしょう」と言われることがありますが、3万円の差は創業期には大きい。しかもこの証明書は登録免許税の減免だけでなく、持続化補助金(創業型)の申請に必須です。証明書がなければ、そもそも創業型に申請する資格がありません。
商工会さんに聞いてみると、「合同会社でも証明書は出ますよ」と教えてくれます。ただし取得には受講開始から発行まで最短5〜6週間かかります。法人設立の登記前に動き始めないと、登録免許税の減免には間に合いません。登記後の遡及適用は不可です。
盲点2:定款認証が不要な合同会社で「定款の体裁」が甘くなり、補助金・融資の添付書類で差戻しになる
合同会社は公証役場での定款認証が不要です。これは設立コストを下げるメリットですが、裏を返せば第三者のチェックが入らないまま定款が完成してしまうということです。
持続化補助金の申請時には定款のコピーを添付します。公庫の創業融資でも面談時に定款の提示を求められることがあります。ここで問題になるのが、ネット上のテンプレートをそのままコピーして作った定款です。
私が現場で見てきた典型的なミスは3つあります。
- 事業目的に補助金で使いたい事業が含まれていない(飲食店を開くのに「飲食業」が目的に入っていない)
- 社員(出資者)の住所と届出住所が一致しない(引っ越し後に定款を更新していない)
- 事業年度の記載が補助金の事業実施期間とずれている(効果報告の起算点に影響する)
株式会社であれば公証人がこうした不備を指摘してくれますが、合同会社は自力で気づかなければなりません。まずは現場を見させてもらってから、定款の中身と補助金の申請要件を突き合わせる。この作業を省略すると、書類不備で差戻しになり、締切に間に合わなくなるケースが後を絶ちません。
盲点3:合同会社の「代表社員」は信金の創業融資で個人保証を求められやすい構造を知らない
合同会社は「所有と経営が一致」している法人形態です。社員(出資者)=業務執行社員=代表社員であるケースがほとんどで、株式会社のように株主と取締役が分かれていません。
これは意思決定が速いというメリットがありますが、信金の創業融資では「法人と個人が実質的に同一」と見なされやすいという側面があります。結果として、代表社員個人の保証を求められるケースが株式会社よりも多い印象です。
以前、東北のある町で合同会社を設立してカフェを開業しようとした方の相談を受けたことがあります。公庫の創業融資は通ったものの、信金の融資では個人保証を条件にされ、資金計画が当初の想定と変わってしまいました。
信金担当者と先に握っておくのが筋です。合同会社で設立する予定であること、事業計画の数字、自己資金の状況を、法人設立の前に信金へ事前相談する。これだけで融資条件の見通しが立ちます。公庫と信金に同時に申し込み、事業計画の数字を1本化するのは株式会社でも合同会社でも同じ鉄則です。
合同会社でも使える補助金・融資は株式会社と「ほぼ同じ」
ここまで盲点を3つ挙げましたが、制度上の結論を言えば、合同会社だから申請できない補助金・融資はほとんどありません。
| 制度 | 合同会社の扱い |
|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金(一般型・創業型) | 申請可能(従業員数の要件を満たせばOK) |
| 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 | 申請可能(法人形態による制限なし) |
| 特定創業支援等事業の証明書 | 取得可能(登録免許税6万→3万に減免) |
| 信用保証協会の創業関連保証 | 利用可能(証明書があれば開業6か月前から) |
| ものづくり補助金 | 申請可能 |
問題は法人形態そのものではなく、申請前の段取りの精度です。設立コストが安い合同会社だからこそ、「安く作れたからあとは補助金で」と準備を省略しがちです。事業計画ありきで現場を確認し、信金・商工会と事前に連携する。この基本は法人形態を問わず変わりません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 合同会社でも持続化補助金(創業型)に申請できますか?
はい、申請できます。法人形態による制限はありません。ただし、特定創業支援等事業の証明書が必須です。創業型は公募締切日時点で開業日(法人設立日)から原則3年以内の小規模事業者が対象です。
Q2. 合同会社の登録免許税6万円を3万円にする方法はありますか?
特定創業支援等事業の証明書を法人設立登記の前に取得し、登記申請時に添付すれば、登録免許税が半額の3万円になります。ただし、登記後の遡及適用はできません。証明書取得には最短5〜6週間かかるため、設立スケジュールから逆算して早めに商工会へ相談してください。
Q3. 合同会社と株式会社で公庫の創業融資の審査に差はありますか?
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は法人形態による審査基準の差はありません。審査では事業計画の実現可能性、自己資金の状況、業界経験などが重視されます。合同会社であること自体は不利になりません。
Q4. 合同会社で創業する場合、補助金申請前に最低限やるべきことは何ですか?
3点セットを揃えてください。①特定創業支援等事業の証明書の取得(商工会で受講開始)、②事業計画の骨格メモ(商圏データ・競合調査・動機200文字)の作成、③GビズIDプライムの申請。法人設立前にこれらを並行して進めることで、設立後すぐに補助金申請に動けます。
Q5. 合同会社を設立した後に株式会社に変更した場合、補助金の扱いはどうなりますか?
補助事業の実施期間中に法人形態を変更する場合は、事前に補助金の事務局へ届け出が必要です。無届けで組織変更すると、交付決定の取消しや補助金返還を求められる可能性があります。将来的に株式会社への変更を検討している場合は、補助事業完了後に行うのが安全です。
まとめ:合同会社は「安く作れる」がゴールではない
合同会社の設立費用の安さは魅力ですが、それは入口にすぎません。私が30年の現場で見てきた限り、創業後に事業が残るかどうかは法人形態ではなく、事業計画の地に足のついた数字と、信金・商工会との連携の密度で決まります。
合同会社で創業するなら、証明書の取得→定款の内容精査→信金への事前相談という3つのステップを、法人設立の前に済ませてください。この段取りが、補助金採択後の事業継続を支える土台になります。






