デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠、第1次の採択率は43.9%でした。半数以上が不採択になる競争で、加点項目を1つも取らずに申請するのは、自ら不利を選んでいるのと同じです。

うちで実際に取った時の話なんですけど、ものづくり補助金で加点項目ゼロのまま出して不採択→2回目に加点を全取りして採択された経験があります。あの時に学んだのは、「加点は事業計画の質とは別の、取れるか取れないかの世界」だということ。デジタル化・AI導入補助金でも構造はまったく同じです。

公募要領を3回読んでみたら、通常枠だけで10項目の加点が設定されていました。しかも、そのうち3つは無料・即日で取得可能です。取らない理由がありません。

この記事では、加点項目を取り逃す中小企業の3つのパターンを整理し、どの加点をいつまでに取るべきかの逆算スケジュールを解説します。

まず知っておくべき:通常枠の加点項目10項目の全体像

公募要領の加点項目一覧(2026年6月3日更新)から、通常枠に設定されている加点項目を整理しました。

加点項目取得難易度所要期間費用
IT戦略ナビwithの活用即日無料
省力化ナビの活用即日無料
成長加速マッチングサービス登録即日無料
クラウド型ITツールの導入検討ツール選定次第
インボイス対応ITツールの導入検討ツール選定次第
推奨セキュリティサービスの選定ツール選定次第
賃上げ事業計画の策定・従業員への表明1〜2週間無料
事業場内最低賃金の水準
健康経営優良法人2026認定数か月無料
くるみん・えるぼし認定数か月〜無料

この10項目を3つのグループに分けると、見落としパターンがくっきり見えてきます。

パターン1:「IT戦略ナビwith」「省力化ナビ」「成長加速マッチング」の無料・即日加点を知らない

最も多い見落としがこの3つです。全部無料、全部即日、全部オンラインで完結します。

IT戦略ナビwithとは

中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイト「デジwith」内のツールです。自社の業務課題を入力すると、おすすめのITツールカテゴリが提示されます。所要時間は15〜30分程度。診断結果の画面キャプチャを保存しておけば完了です。

省力化ナビとは

同じく中小機構が運営する省力化支援ツールです。省力化したい業務を選択すると、候補となる機器やサービスが表示されます。こちらも15分程度で完了します。

成長加速マッチングサービスとは

中小機構の「成長加速マッチング」に企業情報を登録するだけで加点対象になります。ビジネスマッチングの登録なので、登録自体は即日・無料・ペナルティなし。ものづくり補助金でもパートナーシップ構築宣言と並んで「取らない理由がない」加点でしたが、デジタル化・AI導入補助金でも同じ構造です。

この3つを取るだけで、加点ゼロの申請者とは明確に差がつきます。朝のカフェでコーヒー1杯飲む間に3つとも終わる作業量です。テンプレで時短すると、IT導入支援事業者との初回打ち合わせ前に全部済ませておけます。

パターン2:ツール選定と加点項目の整合性を確認しない

次に多いのが、ツール選定の段階で加点を意識していないパターンです。具体的には以下の3つの加点が、選んだツールの仕様によって取れるか取れないかが変わります

クラウド加点

「クラウド型のITツールを導入対象として検討していること」が要件です。2026年の時点で多くの業務ソフトはSaaS型(クラウド型)ですが、オンプレミス版やパッケージ版のソフトを選ぶとこの加点が取れません。同じベンダーのツールでもクラウド版とオンプレ版で登録が異なる場合があるため、IT導入支援事業者に「登録されているのはクラウド版ですか?」と文書で確認してください。

インボイス加点

「インボイス制度への対応機能を持つITツールの導入を検討していること」が要件です。会計ソフトや受発注システムならほぼ対応していますが、在庫管理や勤怠管理など、インボイスとは直接関係のないツールを導入する場合はこの加点が取れない可能性があります。ITツール検索で候補ツールの機能を事前に確認してください。

セキュリティ加点

「経済産業省や関係機関が推進するセキュリティサービスを選定していること」が要件です。これはセキュリティ対策推進枠とは別の話で、通常枠でもセキュリティサービスをセットで導入検討している場合に加点されます。

ポイントは、ツール選定の「前」に加点項目一覧を確認することです。「入れたいツール」から考えると加点が取れないケースが出ますが、「取れる加点」から逆算してツールの要件を固めると、加点と導入目的の両方を満たせる選択ができます。

パターン3:認定系加点は「公募直前では間に合わない」ことを知らない

通常枠の加点項目には、取得に数か月かかる認定系が2つあります。

健康経営優良法人2026認定

経済産業省の認定制度です。毎年8月頃に申請受付が始まり、翌年3月に認定が発表されるスケジュールで、申請から認定まで約7か月かかります。2026年度の補助金申請に間に合わせるには、すでに認定を持っていることが前提です。今から取得しても2027年3月の認定になるため、次年度の申請に向けた投資と割り切ってください。

くるみん認定・えるぼし認定

厚生労働省の認定です。くるみんは育児支援、えるぼしは女性活躍推進の取り組みが求められます。いずれも行動計画の策定→実施→申請→認定のプロセスが必要で、最低でも数か月かかります。いずれか一方の取得でも加点対象です。

認定系加点は「今回の公募に間に合わせる」のではなく、「次回以降の申請で確実に加点を取るために今から動く」という発想が重要です。年に複数回の公募がある制度だからこそ、1回目で認定を取り、2回目で加点を活かすという2段階戦略が有効です。

逆算スケジュール:公募締切から何日前に何をすべきか

加点項目を取得期間別に整理すると、以下のスケジュールになります。

タイミングやること対応する加点
公募締切の当日でもOKIT戦略ナビwith・省力化ナビ・成長加速マッチング登録3項目
公募締切の2週間前ツール選定の最終確認(クラウド・インボイス・セキュリティ対応)3項目
公募締切の1〜2週間前賃上げ事業計画の策定・従業員への表明1項目
6か月以上前健康経営優良法人・くるみん/えるぼし認定の申請2項目

現実的な目標ラインとしては、無料即日3項目+ツール選定連動3項目+賃上げ加点=7項目が今回の公募で狙えるラインです。認定系2項目は次回以降の布石として動き始めてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 加点項目を全部取れば採択は確実ですか?

A. いいえ。加点は審査の「一部」であり、事業計画の内容(業務課題の具体性、ITツールの選定理由、労働生産性の向上根拠など)が審査の中心です。ただし、第1次採択率43.9%の競争では、同じレベルの事業計画なら加点の差が合否を分けます。加点は「事業計画の質に上乗せするもの」と考えてください。

Q2. IT戦略ナビwithは何を入力すればいいですか?

A. 自社の業種・従業員数・課題としている業務領域を選択式で入力します。特別な資料は不要で、15〜30分程度で完了します。診断結果画面のスクリーンショットを保存しておくと、IT導入支援事業者との打ち合わせでも使えます。

Q3. 賃上げ加点の「従業員への表明」はどうやって証明しますか?

A. 交付申請時に、賃上げ計画を策定し従業員に表明したことを申請システム上で宣誓します。社内文書(通知文や議事録)で賃上げ計画を従業員に周知し、その日付を記録しておくことが実務上のポイントです。表明のタイミングは交付申請日より前である必要があります。

Q4. インボイス枠で申請する場合も同じ加点項目ですか?

A. いいえ。枠ごとに加点項目が異なります。たとえばクラウド加点は通常枠にはありますが、インボイス枠では設定が異なる場合があります。枠を決めた後に、その枠の加点項目一覧を公募要領で確認してください。公式サイトに「加点項目一覧」のPDFが公開されています。

まとめ

デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠で加点項目を取り逃す3つのパターンを整理しました。

  1. 無料・即日加点を知らない:IT戦略ナビwith・省力化ナビ・成長加速マッチングの3つは即日・無料で取得可能
  2. ツール選定と加点の不整合:クラウド加点・インボイス加点・セキュリティ加点はツールの仕様次第で取れるか変わる
  3. 認定系加点の準備不足:健康経営優良法人・くるみん/えるぼしは取得に数か月〜7か月かかるため次回以降の布石として動く

第1次採択率43.9%の競争で勝つには、事業計画の質を高めることが大前提です。でも、加点項目を取り逃して自ら不利な状態で申請するのはもったいない。まずは無料の3項目から。公募要領の加点項目一覧を印刷して、3色蛍光ペンで自社が取れる項目にマーカーを引くところから始めてみてください。

参考文献