朝の散歩で商店街を歩いていると、最近やたらと「補助金 事業計画 代行」という看板を掲げた事務所が目につくようになりました。松島です。仙台で30年、創業期の個人事業主さんに伴走してきた行政書士です。
正直に申し上げますと、事業計画書の「丸投げ」で採択を目指すのは、いまの審査体制では非常に難しくなっています。小規模事業者持続化補助金<創業型>第3回(2026年4月30日締切)の採択率は約38%。この狭き門を、自分の事業を語れない計画書で通過するのは至難の業です。
「プロに任せれば通る」が不採択になる3つの構造
1. 審査員は「事業者本人の言葉」を見ている
公募要領には明記されていませんが、商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)は、事業者との面談を経て作成されます。この面談で「事業計画書に書いてあることを自分の言葉で説明できない」と判断されれば、様式4の評価コメントにそれが反映されます。
商工会さんに聞いてみると、「面談で計画書の数字の根拠を聞いたら答えられなかった」という事業者が毎回2〜3割いるそうです。そういう方の多くが、計画書をコンサルや代行業者に任せきりにしているケースです。
2. テンプレート型の計画書は「地元データ」が抜けている
私の30年の経験では、ネット上の記載例テンプレートをそのまま真似て事業計画書を書いた方の7割以上が不採択になっています。共通しているのは以下の3点です。
- 売上計画の客数×客単価が、地元商圏の昼間人口と大きく乖離している
- 競合分析が業界全体の市場規模で止まり、半径1km以内の実態がない
- 効果測定が「売上○%増」だけで、月次のアクションプランがない
代行業者が書く計画書も、このパターンに陥りがちです。なぜなら、業者は地元の商圏データを持っていないからです。まずは現場を見させてもらってから計画を書く――これが鉄則なのですが、遠方の代行業者にそれは期待できません。
3. 採択されても「自分の計画」でなければ事業が続かない
以前、東北の小さな町で開業した30代の女性飲食店主から相談を受けたことがあります。前任のコンサルタントが書いた事業計画書は見栄えが綺麗で、1000万円の採択を勝ち取りました。しかし、PLをよく見ると売上前提が地元の商圏規模に対して過大でした。半年でキャッシュが枯渇し、信金に返済猶予を交渉しましたが、結局2年で閉店されました。
補助金は「採択がゴール」になった瞬間、事業は終わります。自分で書いていない計画書は、自分の行動指針にならない。これが丸投げの最大のリスクです。
自分の言葉で書く「骨格メモ」3ステップ
「でも、自分で事業計画書なんて書けない」という声をよく聞きます。安心してください。最初から完璧な計画書を書く必要はありません。まずは「骨格メモ」を自分の言葉で書くことが大切です。この骨格メモを持って商工会に行けば、面談が具体的なブラッシュアップの場になります。
ステップ1:jSTAT MAPで商圏の「事実」を集める(所要時間:約1時間)
総務省統計局が無料で公開しているjSTAT MAP(地図で見る統計)を使います。やることは3つだけです。
- 候補地の住所を入力し、半径500m〜1kmの円を描く
- その圏内の昼間人口と夜間人口を確認する
- スクリーンショットを保存して、メモに貼り付ける
この数字が、売上計画の「客数」の根拠になります。たとえば昼間人口が3,000人の商圏で「1日100人来店」と書けば、審査員は「商圏人口の3%が毎日来る根拠は?」と疑問を持ちます。地に足のついた数字を書くために、まず事実を押さえてください。
ステップ2:半径1km以内の競合を「足で」調べる(所要時間:半日)
Googleマップで同業種を検索するだけでは不十分です。実際に歩いて、以下を確認してください。
- 同業種の店舗数と、各店の客層・価格帯
- 空き店舗の数(商圏の活気の指標)
- 近隣の集客施設(駅、病院、学校、スーパーなど)
この情報を箇条書きでメモするだけで、事業計画書の「競合分析」の骨格ができます。業界マクロの市場規模ではなく、「半径1km以内の同業者リスト」が審査では求められています。
ステップ3:「なぜ自分がやるのか」を200文字で書く(所要時間:30分)
最後に、以下の問いに自分の言葉で答えてください。
- なぜこの事業をやりたいのか
- なぜこの場所なのか
- 自分のどんな経験・スキルが活かせるのか
200文字程度で構いません。これが事業計画書の「動機」と「実現可能性」の核になります。コンサルタントには絶対に書けない、あなただけの言葉です。
骨格メモを持って商工会に行く効果
骨格メモ(jSTAT MAPの商圏データ+競合調査メモ+動機200文字)を揃えて商工会に相談に行くと、面談の質が劇的に変わります。
商工会の担当者も、白紙の状態から「何がやりたいですか?」と聞くより、具体的なデータを前にして「この客数想定はもう少し保守的に見たほうがいいですね」とアドバイスできる方が、お互いにとって有意義です。
信金担当者と先に握っておくのが筋だと私は考えていますが、商工会への相談と並行して信金にも事業の概要を伝えておくと、採択後の融資相談がスムーズに進みます。事業計画書は補助金用と融資用で別々に作るのではなく、骨格メモを1本化して数字を揃えるのが鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. コンサルに相談すること自体がダメなのですか?
いいえ。相談やアドバイスを受けること自体は問題ありません。問題なのは「計画書の作成を丸投げ」することです。骨格メモは自分で書き、それをブラッシュアップしてもらう形であれば、専門家の力を有効に活用できます。
Q2. jSTAT MAPの使い方がわかりません。
jSTAT MAP(https://jstatmap.e-stat.go.jp/)にアクセスし、無料のユーザー登録を行えば使えます。「統計地図の作成」→「エリア分析」で住所を入力し、円の半径を指定するだけです。操作に不安がある場合は、商工会の相談窓口でも使い方を教えてもらえます。
Q3. 骨格メモはどのくらいの分量が必要ですか?
A4用紙1〜2枚程度で十分です。jSTAT MAPのスクリーンショット、競合調査の箇条書き、動機200文字。この3点が揃っていれば、商工会との面談で事業計画書の形に仕上げていけます。
Q4. 持続化補助金<創業型>第3回の申請に間に合いますか?
2026年4月30日が申請締切、4月16日が商工会の様式4発行受付締切です。骨格メモの作成自体は1〜2日で可能ですが、商工会との面談や様式4の発行には数週間かかります。遅くとも締切の6週間前には商工会に初回相談をしてください。なお、特定創業支援等事業の証明書が必要な場合は、取得に数週間〜数ヶ月かかるため最優先で動く必要があります。
Q5. 採択率38%と聞くと不安です。骨格メモを書けば採択されますか?
骨格メモを書いたからといって必ず採択されるわけではありません。ただし、地元商圏データに基づいた計画書は審査員の納得感が格段に違います。テンプレートの「型」を借りつつ、中身を地元のリアルなデータで埋めること。これが採択への最短距離です。
まとめ
持続化補助金の事業計画書は、きれいに仕上げることよりも「自分の事業を自分の言葉で語れるか」が問われています。コンサルへの丸投げは、審査段階で見抜かれるリスクがあるだけでなく、採択後の事業運営でも致命的な弱点になります。
まずはjSTAT MAPで商圏データを確認し、競合を自分の足で調べ、「なぜ自分がやるのか」を200文字で書く。この3ステップの骨格メモがあれば、商工会との面談は具体的なブラッシュアップの場になります。補助金はあくまで事業を始める「マッチ」です。薪を用意するのは事業主自身です。





