埼玉県の中小企業・個人事業主が今(2026年10月時点)使える補助金は、国の持続化補助金やものづくり補助金とは別に、県独自の制度が複数動いている。問題は「どれが今受付中で、どの順番で申請すべきか」が一目でわからない点だ。

経済産業局での業務経験から言うと、埼玉県は財政力指数が比較的高い自立型の団体であり、県の自主財源で上乗せできる独自制度を打てる余地がある。同時に、10〜11月は追加公募が重なりやすい時期でもある。以下に、公式ページで確認できた制度を整理する。

国の制度との違い──埼玉県独自の部分はどこか

国の補助金(IT導入補助金・省力化投資補助金・持続化補助金)と埼玉県の独自制度の最大の違いは、対象品目の定義と補助率の2点だ。

たとえば国の「省力化投資補助金」は登録されたカタログ品目のみが対象で、製品選定が制約される。一方、令和8年度に埼玉県が実施した省力化支援補助金は機器カテゴリが県独自定義で、カタログ外の機器でも条件次第で申請できた実績がある。

補助率も異なる。国のIT導入補助金(通常枠)は補助率1/2が標準だが、埼玉県のDX導入支援補助金は最大3/4まで補助率が上がる。自己負担が国の制度より少なくて済む点が大きい。

もうひとつの違いは申請の複雑さだ。国の補助金は認定支援機関(士業・商工会議所経由)の関与が必要なケースが多い。埼玉県の独自補助金の多くはオンライン単独申請で完結し、認定支援機関なしで申請できる。

ただし、国と県を組み合わせるときは「同一経費への二重計上禁止」が共通ルール。設備AはIT導入補助金、システムBは県のDX補助金という形で経費を分けるのが実務上の定石だ。

いま申請できる制度(2026-10-05 時点・受付中)

① 埼玉県中小企業DX導入支援補助金(追加募集中・10月30日締切)

2026年10月1日〜10月30日(金)16時まで追加募集を受け付けている。DXツール(クラウド会計・RPA・在庫管理システム・顧客管理ツール等)の導入費用に対し、補助対象経費の3/4以内、上限300万円(下限7万5千円)を補助する。

対象は埼玉県内に本店または主たる事業所を有する中小企業者等で、個人事業主(住民票上の住所地または主たる事務所が県内)も申請できる。補助対象事業費は10万円以上400万円以下。

第1〜3期(7〜9月)はすでに終了しており、今回の追加募集が今年度最後の機会になる可能性が高い。申請は専用サイトからのオンライン申請のみで、郵送申請は受け付けていない。

締切: 令和8年10月30日(金)16時(2026-10-05 時点)

② 中東情勢に伴う価格高騰・供給不足緊急支援補助金(第1期受付中・11月6日締切)

石油等由来製品(プラスチック・合成繊維・合成ゴム等)の価格高騰・供給不足により、直近1か月の利益率が前年同月比5%以上減少している県内中小企業を対象とする。個人事業主は「所在地」が埼玉県内であることが要件。

補助金は2種類ある。

  • 価格高騰・供給不足緊急支援:補助率1/2、上限100万円(下限15万円)。石油等由来製品の仕入額上昇分または代替品との価格差が対象経費。
  • 代替品対応設備投資支援:補助率3/4、上限1,125万円(下限15万円)。代替品への切り替えに必要な設備購入・更新費用が対象。

第2期(令和8年12月21日〜令和9年2月5日 予定)もあるため、第1期に間に合わない場合でも第2期で申請できる。申請は専用サイトからのオンライン申請のみ。

第1期締切: 令和8年11月6日(金)16時(2026-10-05 時点)

③ シニア人材活用による賃上げ環境整備事業補助金(受付中・来年2月まで)

埼玉県シニア人材バンクを活用して60歳以上のシニア人材を確保し、賃上げにつなげる環境整備に取り組む中小企業向けの補助金。補助率10分の8と高く、採用・転籍の場合は最大260万円、副業・兼業等は最大60万円まで補助される。

この補助金は「先にシニア人材バンクへの登録・相談ありき」の構造になっている。まず公益財団法人埼玉県産業振興公社内の企業開拓員(TEL: 048-647-4075)に相談し、シニア人材バンクを通じた採用プロセスを経てから申請する流れだ。

対象は法人の中小企業が主で、個人事業主については公式ページに明記がない(2026-10-05 時点)。不明な場合は産業振興公社に直接確認を。

申請期間: 令和8年5月11日〜令和9年2月1日(月)(2026-10-05 時点)

申請の順番──どれを先に取ると他が取れなくなるか

複数の補助金を検討している場合、次の優先順位で動くのが基本だ。

  1. 締切が最も近い制度から動く:DX補助金の追加募集は10月30日締切。まずこれを優先する。申請書類の準備(事業計画・見積書・決算書等)は最低でも2〜3週間かかる。今から動かないと間に合わない。
  2. 価格高騰補助金を11月6日に間に合わせる:石油等由来製品を扱う事業者は、DX補助金と並行して第1期(11月6日)を目指す。同一経費への重複計上は禁止されているため、それぞれの対象経費が重複しないよう事前に整理する。
  3. シニア補助金は相談先から着手:申請期間が来年2月まであるため、まず産業振興公社の企業開拓員に相談しシニア人材バンクへの登録を進める。補助金申請はその後。

国の補助金(IT導入補助金・持続化補助金)と県の補助金は原則として併用可能だが、同一事業・同一経費への重複計上は不可。「何のための経費か」を制度ごとに明確に分けて申請するのがポイントになる。

よくある不採択の理由

過去の公募実績を見ると、埼玉県の独自補助金で不採択になるパターンには共通点がある。

  • 生産性向上の効果が数値で示されていない:「DXを導入すれば便利になる」だけでは通らない。「作業時間を月〇時間削減」「入力ミスを〇%低減」など、具体的な改善効果の見込みを数値で示す必要がある。
  • 見積もりの妥当性の疎明が弱い:複数の見積もりを取ったか、取れない場合はその理由が明示されているかが審査で確認される。1社見積もりで理由記載なしは減点対象になる。
  • 補助対象経費の定義の確認不足:汎用性が高い機器や、ソフトウェアのオプション費用が対象外になるケースがある。公募要領の「補助対象外経費」の欄を必ず確認してから見積もりを取ること。
  • 賃上げ要件の計算ミス:省力化補助金など賃上げ要件に加点や補助率上乗せが連動する制度では、要件の計算方法を誤ると採択後に補助額が削減されるリスクもある。

議会会期前の動きを見ると、埼玉県は補正予算で追加公募を打つパターンが多い。過去3年の優先度から見えるのは、省力化・DX・賃上げ関連に予算が集中している傾向だ。次年度以降もこの方向性は続くとみている。

過去の制度(次年度の参考)

以下は2026年度内にすでに募集が終了した制度。次年度の申請計画を立てる際の参考にしてほしい。

埼玉県中小企業省力化支援事業補助金(令和8年度・申請受付終了)

補助率2/3以内(賃上げ要件充足時は4/5以内)、上限1,000万円(賃上げ: 1,200万円)の省力化設備投資補助金。令和8年7月17日(金)に受付終了。申請561件のうち254件が採択(採択率約45%)。

令和9年度も類似制度が継続される可能性がある。この県の予算編成サイクルだと、例年5〜6月に公募開始となるパターンが多い。埼玉県産業労働部の公式ページを定期的に確認しておくことをすすめる。

FAQ

埼玉県の補助金は個人事業主も申請できますか?

制度によって異なります。DX導入支援補助金と中東情勢緊急支援補助金は個人事業主も対象に含まれています(埼玉県内に住民票上の住所地または主たる事務所があること)。シニア人材活用補助金は中小企業が主対象で、個人事業主への適用は公式ページに明記がありません(2026-10-05 時点)。各補助金の公募要領で「補助対象者」の欄を必ず確認してください。

国の補助金と埼玉県の補助金は同時に申請できますか?

同一経費への重複計上をしない限り、原則として同時申請は可能です。たとえばIT導入補助金で会計ソフトを導入し、県のDX補助金で在庫管理システムを導入するという申請は可能です。ただし各補助金の公募要領で「他の補助金との重複申請」の記載を確認してください(2026-10-05 時点)。

DX補助金の追加募集に申請するとき、認定支援機関は必要ですか?

埼玉県のDX導入支援補助金は、国のIT導入補助金と異なり、認定支援機関の関与は申請要件に含まれていません(2026-10-05 時点)。電子申請サービスから直接申請できます。不安な場合は埼玉県産業振興公社の窓口に事前相談する方法もあります。

採択率はどのくらいですか?

令和8年度の省力化支援補助金は申請561件に対し採択254件(採択率約45%)でした。DX補助金の採択率は公表されていません。申請要件の充足と事業計画の具体性が採否を左右します。

補助金はいつ振り込まれますか?

補助金は後払い(実績払い)が基本です。交付決定後に事業を実施し、完了報告・確定検査を経て振り込まれます。申請〜交付決定まで1〜2か月、事業実施・報告〜支払いまでさらに1〜3か月かかるケースが多く、一時的に自己資金での立て替えが必要です(2026-10-05 時点)。

参考文献

問い合わせ先

  • DX導入支援補助金:埼玉県産業労働部 DX推進課(専用サイト: dxdounyushienhozyo.pref.saitama.lg.jp)
  • 価格高騰緊急支援補助金:埼玉県産業労働部 経営支援課(専用サイト: chuto-chusho.pref.saitama.lg.jp)
  • シニア補助金:公益財団法人埼玉県産業振興公社 企業開拓員(TEL: 048-647-4075)
  • 次年度の省力化補助金(問い合わせ):埼玉県産業労働部 産業支援課(公式ページ)