群馬県で事業を営む中小企業・個人事業主が補助金申請で最初につまずくのは「国の制度か県の制度か、どちらを先に出すべきか」という優先順序の問題だ。私は経済産業局に5年間勤務し、各都道府県の予算サイクルや制度設計に関わってきた。群馬県は自治体独自補助金の設計が比較的整っている県のひとつで、国の制度を補完・上乗せする仕組みが複数ある。この記事では、2026年10月1日時点で申請できる群馬県独自の補助金・助成金を整理し、国の制度との違いと申請の優先順位をまとめる。

国の補助金と群馬県独自補助金の違い――「上乗せ」と「横出し」を理解する

補助金には大きく「国の補助金」と「都道府県・市区町村の独自補助金」の2種類がある。国の代表格は、小規模事業者持続化補助金(経産省)、ものづくり補助金(経産省)、IT導入補助金(経産省)などだ。

群馬県の独自補助金は、国の制度に対して主に2つの関係性を持つ。

  • 上乗せ型:国の制度に採択されたことを条件に、さらに上乗せで補助する。例として2025年度に設けられた「ぐんま生産性向上等支援補助金」は、国のものづくり補助金採択かつ6%以上の賃上げ実施企業に自己負担額の1/2(最大300万円)を追加補助した。
  • 横出し型:国の制度の対象外となる分野や事業者を補完する独自設計。「ぐんまDX技術革新補助金」「ぐんま技術革新チャレンジ補助金」などがこれにあたる。

最大の違いは競争相手の範囲だ。国の制度は全国が対象なため競争率が高く審査も厳格。一方、群馬県独自の制度は「県内事業所を持つ中小企業者」に対象が絞られるため、実質的な競争相手が群馬県内の事業者に限定される。条件を満たすなら、県独自制度のほうが採択されやすいケースが多い。

2026年10月現在――申請できる群馬県独自制度

① ぐんま賃上げ促進支援金(第2期)――2027年1月31日まで受付中

2026年10月1日時点で最も使いやすい現役制度がこれだ。群馬県内に事業所を有する中小企業・個人事業主が対象で、基本給を一定率以上引き上げた従業員分について支援金が支給される。

区分賃上げ要件支給額(1人)上限(1期)
通常(中小企業等)基本給5%以上引き上げ5万円40人分・200万円
小規模事業者特例基本給3%以上引き上げ3万円20人分・60万円

2期合計では通常企業で最大400万円、小規模事業者特例で最大120万円になる(2026-10-01時点)。対象は2026年9月1日〜12月31日に賃上げした従業員分で、申請受付は2026年9月1日〜2027年1月31日まで。申請はオンライン専用サイト(https://gunma-chinage.pref.gunma.jp/)のみ。

個人事業主が「小規模事業者特例」を使えるかどうかは従業員数による。小規模事業者の定義(商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律第2条)は、製造業・その他が従業員20人以下、商業・サービス業が5人以下だ。この範囲に収まる個人事業主は特例対象になれる。

問い合わせ:ぐんま賃上げ促進支援金事業事務局(コールセンター)050-6892-9990(平日9〜17時)

② 群馬県成長実現型M&A補助金(譲渡型・承継後支援型)――2026年12月18日まで

後継者不在で廃業を検討している事業主や、M&A成立後の統合作業(PMI)を進める事業者を支援する制度。2026-10-01時点で以下の2区分が受付中だ。

区分対象補助率上限
譲渡型(売り手)後継者不在で廃業検討中の中小企業1/2以内100万円
承継後支援型M&A成立後のPMI実施企業1/2以内200万円

申請期限は2026年12月18日、事業実施期限は2027年2月12日(2026-10-01時点)。問い合わせ先:群馬県産業経済部地域企業支援課(E-mail: power-up@pref.gunma.lg.jp / TEL: 027-226-3342)

申請の優先順位――どれを先に取ると後の選択肢が狭まるか

補助金申請で最も重要なのが「優先順位」だ。複数の制度で「他の公的補助金との重複受給不可」という要件が付くことが多く、先に採択を受けた補助金が後の申請を封じることがある。

  1. 国の制度から先に申請・採択を受ける:小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金は国予算で動く。群馬県の「上乗せ型」補助金は「国の制度に採択されていること」が前提条件になるため、国の申請を先に済ませる。
  2. 賃上げ支援金は独立して動かせる:「ぐんま賃上げ促進支援金」は賃上げ実績に基づく後払い型なので、他の補助金との申請順序を特に気にしなくてよい。ただし「同一従業員への他の公的賃上げ支援との重複不可」という条件がある。賃上げを実施したら申請期間内に申請するだけだ。
  3. 設備・技術系の県独自補助金は年度内の公募スケジュールに合わせる:「ぐんまDX技術革新補助金」「ぐんま技術革新チャレンジ補助金」は年度内に1〜2回しか公募がなく、令和8年度は4〜5月に集中した。前年末から申請計画を立てておく必要がある。
  4. M&A補助金は承継フェーズに合わせて選ぶ:「成長実現型M&A補助金」は承継の各段階(売り手・買い手・PMI)に対応しているため、事業承継の進捗に合わせて申請区分を選ぶ。

よくある不採択の理由

経産局勤務時代に現場で目にしてきた不採択パターンの中で、群馬県の独自制度に関連して多かったのは以下の4点だ。

  • 対象外事業者の申請:「パートナーシップ構築宣言」が要件に入っている制度(ぐんまDX技術革新補助金等)で、未宣言のまま申請するケース。
  • 事業計画書の定量性の欠如:「生産性・企業価値の向上を定量的に示すこと」が求められる制度で、「業務効率化が見込まれます」という定性表現のみで終わっているケース。数値目標と根拠をセットにすること。
  • 採択前の発注・支出:ぐんまDX技術革新補助金等は交付決定日前の支出が補助対象外。「採択されるだろう」と先走って機器を発注してしまうと全額自己負担になる。交付決定通知を受け取ってから発注が鉄則だ。
  • 賃上げ支援金での手当増額の誤認識:「基本給の引き上げ」が要件であり、諸手当の増額は対象外。ベースアップを行わず手当で対処してしまうと支給対象にならない。

2026年度に募集が終了した制度(次年度の参考)

以下は2026-10-01時点で受付を終了している制度だ。次年度(令和9年度)の申請計画を立てる材料として記載する。

ぐんまDX技術革新補助金(受付終了)

補助率1/2、上限1,000万円。群馬県内に事業所を持つ中小企業者(パートナーシップ構築宣言要件あり)が対象。令和8年度の受付は2026年4月1日〜5月15日で終了(本年度二次募集なし)。次年度は同時期(4〜5月)の公募が見込まれる。

ぐんま技術革新チャレンジ補助金(受付終了)

補助率1/2(小規模事業者は4/5)、上限80万円(県・市町村各40万円の折半)。実施市町村内に主たる事業所を有する中小企業者が対象。令和8年度の受付は2026年4月1日〜5月15日で終了、本年度二次募集の予定もなし。申請はJグランツ、電子メール、郵送、市町村窓口持参の4方法から選べる。

EXPOチャレンジ支援補助金(予算上限到達で終了)

国内展示会1/2・上限100万円、海外展示会2/3・上限200万円。制度期間は令和8年12月18日までだったが、2026年6月時点で予算上限に達し受付終了。次年度設計の確認を行いたい制度だ。

ぐんま未来共創トライアル補助金(受付終了)

補助率2/3、上限3,000万円(スタートアップ参画時+200万円加算)。3者以上の連携体であることが必須条件。令和8年度は2026年4月9日〜5月29日で終了。スタートアップ・大学・自治体との連携が見込める場合は次年度の有力候補となる。

群馬県中小企業奨学金返還支援補助金(受付終了)

正社員採用後5年以内で奨学金返還中・返還予定の従業員を持つ中小企業を支援。令和8年度は2026年8月3日〜9月30日で受付終了(先着順)。採用強化を検討している中小企業は令和9年度の情報を早めに確認しておきたい。

問い合わせ先(公式)

  • 賃上げ支援全般:群馬県産業経済部労働政策課 TEL: 027-226-3408
  • 技術革新・DX補助金 / M&A補助金:群馬県産業経済部地域企業支援課 TEL: 027-226-3352
  • デジタル・スタートアップ系:群馬県産業経済部未来投資・デジタル産業課 TEL: 027-898-2792
  • 補助金情報一覧(公式):群馬県 補助金等の情報ページ

FAQ

個人事業主でも群馬県の補助金は使えますか?

はい、使える制度があります。「ぐんま賃上げ促進支援金」は従業員がいれば個人事業主でも小規模事業者特例として申請できます。ただし「ぐんま未来共創トライアル補助金」のように3者以上の連携体が条件の制度は、個人事業主単独での申請は実質難しいケースがあります。制度ごとに対象要件を公式ページで確認してください。

国の補助金と群馬県の補助金を同時に申請できますか?

補助対象となる経費が重複しない限り、申請自体は可能なケースが多いです。ただし各制度の公募要領に「他の公的補助金との重複受給不可」という条件が付く場合があります。申請前に各制度の募集要項を確認し、不明点は所管課への問い合わせを推奨します。

ぐんま賃上げ促進支援金は基本給以外の手当増額でも対象になりますか?

なりません。「基本給の引き上げ(ベースアップ)」が要件です。諸手当の増額は対象外です。賃上げ前後の賃金台帳と、賃金規定または賃金改定通知書などを申請書類として準備してください。

群馬県の補助金と市町村の補助金は併用できますか?

制度設計によります。「ぐんま技術革新チャレンジ補助金」は県と実施市町村が共同で設ける仕組みのため市町村ごとに要件が異なります。市町村独自の補助金(前橋市・高崎市等)は県の制度と別予算なので、重複禁止条件がなければ両方申請できる場合があります。各市区町村の商工会・商工会議所への相談が最も確実です。

令和9年度(2027年度)の補助金公募はいつ確認すればよいですか?

群馬県の技術革新系補助金(DX・チャレンジ)は例年4〜5月に第一次公募が始まります。予算の動向は前年12月ごろに県議会の予算説明資料で確認できます。年度替わりの前から群馬県補助金等の情報ページを定期的にチェックすることをおすすめします。

参考文献