経済産業局で地方の補助金制度を5年担当した私が、茨城県の中小企業・個人事業主向けに絞って整理した。この県の予算編成サイクルだと、秋口(9〜10月)は複数の二次公募が重なる時期でもある。今取れるものと、年内に動きがあるものを先に押さえておきたい。
茨城県の補助金──国の制度と何が違うか
国の補助金(ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金など)は全都道府県を横並びで審査する仕組みだ。採択率は年々厳しくなっており、競争倍率が高い。一方、茨城県が独自に出している補助金は審査対象が「県内事業者」に限られる。競争相手の母数が小さい分、採択のハードルも相対的に低い場合がある。
ただし、茨城県の独自制度には「国の制度を先に取ることが条件」のものも存在する。例えば「いばらき業務改善奨励金」は国の業務改善助成金の交付決定が前提だ。順番を間違えると、県の補助金だけ申請できない事態になる。
2026年9月24日時点で受付中の制度を以下に整理する。
今申請できる茨城県の独自補助金
① いばらきチャレンジ基金事業(二次公募)──上限250万円・締切2026年10月2日
県内に主たる事業所を有する中小企業者が対象。3つの枠がある(2026年9月24日時点)。
- 海外販路開拓促進事業:補助上限150万円・補助率2/3以内。展示会出展費・通訳費・マーケティング調査費などが対象。
- 外国語ウェブサイト制作事業:補助上限100万円・補助率2/3以内。外国語版サイトの制作・翻訳費が対象。
- 国際認証取得事業:補助上限250万円・補助率2/3以内。ISO取得・試験費・審査費などが対象。
二次公募の締切は令和8年10月2日(金)17時必着。一次公募で取りこぼした事業者には今期最後の機会だ。なお「新技術・新製品開発促進事業(上限500万円)」は一次公募のみで終了しているため、今回は上記3枠だけが対象となる。
② デジタルスキル習得支援事業補助金──上限10万円・先着順受付中(期限2027年1月29日)
新たに取り組む事業に必要なデジタルスキルの研修・資格取得費を補助する制度。補助率は1/2以内・上限10万円。対象は「リスキリング推進宣言企業」として県に登録した中小企業(2026年9月24日時点)。
受付は先着順のため、予算満額に達した時点で終了する。研修開始の21日前までに申請が必要な点も見落としやすい。受講完了期限は令和9年2月28日。金額は10万円と小さいが、要件が比較的シンプルなため、他の補助金と並行申請しやすい。
③ 中小規模事業所省エネ対策設備導入補助金──上限100万円・締切2026年12月18日
省エネ設備の改修・更新にかかる費用(設計費・設備費・工事費)の1/3以内・上限100万円未満を補助する(2026年9月24日時点)。申請には以下3つの条件をすべて満たす必要がある。
- 令和7年または令和8年度に「中小規模事業所省エネルギー対策支援事業」の省エネ診断を受診済み
- 「茨城エコ事業所」に登録済み
- 「いばらきエコチャレンジ」賛同事業所に登録済み
診断で助言された全設備の改修・更新を実施し、省エネ率20%以上または10t-CO2以上の削減効果が見込めることが採択の前提だ。締切は令和8年12月18日(金)17時だが、予算上限到達次第、繰り上げ終了となる。
④ いばらき業務改善奨励金──国の業務改善助成金の自己負担額の1/2を追加補助
令和8年4月1日より申請受付を再開している茨城県独自の上乗せ制度だ。国の「業務改善助成金」を取得した中小企業・小規模事業者等を対象に、その自己負担額の1/2を茨城県が追加で助成する(2026年9月24日時点)。
事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、引き上げ後の最低賃金が1,040円以上になることが条件。申請の流れは国の業務改善助成金(茨城労働局)→交付決定・支給決定通知→茨城県への奨励金申請、という順番になる。
賃上げをすでに計画している事業者が見落としやすい制度。国の申請と並行して、この上乗せ制度も確認しておく価値がある。
申請の順番──どれを先に取ると他が取れなくなるか
過去3年の優先度から見えるのは、「国の制度を先に通さないと県の上乗せが取れないケース」と「国・県が独立して使えるケース」の2パターンに大別されるという点だ。
- 国→県の順番が必須:いばらき業務改善奨励金は国の業務改善助成金の交付決定が前提。国に先に申請すること。
- 県の事前登録が先決:省エネ補助金は省エネ診断受診・エコ事業所登録・エコチャレンジ登録が先決。設備投資の計画がある場合は早めにこれらを済ませておく。
- 独立して使える制度:いばらきチャレンジ基金・デジタルスキル補助金は国の補助金を取っていなくても申請可能。ただし、同一経費を他の補助金と重複計上することはできない。
- 締切が近い順に動く:2026年10月2日のいばらきチャレンジ基金(二次公募)が最優先。次に12月18日の省エネ補助金。デジタルスキル補助金は翌年1月まであるため後回しにできる。
よくある不採択の理由
地方補助金の申請現場を見てきて、不採択になる案件のパターンは大体決まっている。
- 対象経費の認識ズレ:「汎用品」「既製品の購入のみ」は対象外になることが多い。設備費の中に汎用品が混在していると、その分が削られる。事前に担当課へ確認することで防げるミスだ。
- 事業計画の薄さ:「何のために・どのように使うか」の説明が足りない案件は審査で落ちる。特にチャレンジ基金は補助事業と会社の事業計画の整合性を見られる。
- 提出書類の不備:「県税の納税証明」「登録証明書」など付属書類の抜けが多い。公募要領の添付書類チェックリストを申請の1週間前に通しで確認しておきたい。
- 省エネ診断が間に合わない:省エネ補助金で最も多いのがこれ。補助金申請より前に省エネ診断の受診が必要なのに、同時進行しようとして間に合わなくなるケースが散見される。
過去の制度──次年度の見通しを立てる参考として
以下は2026年9月24日時点で募集終了の制度。次年度の準備として把握しておきたい。
- 令和8年度戦略分野新製品開発促進事業費補助金:補助上限1,000万円・補助率2/3(優れた提案は3/4)。公募は2026年4〜5月で終了。次年度も4月前後に公募が出ると想定される。採択予定件数20件程度。
- いばらきチャレンジ基金(新技術・新製品開発促進事業):補助上限500万円(複数年)/250万円(単年)・補助率2/3。令和8年度一次公募は終了。次年度の一次公募は例年4月前後。
- 地域課題解決型起業支援事業:デジタル技術を活用した起業・第二創業向けの起業支援金。2026年4〜5月に公募終了。
- 茨城県中小物流事業者業務効率化補助事業:配車計画システム・テールゲートリフター等の導入費補助。補助上限200万円・補助率1/2。令和6年度で申請終了。令和8年度は現時点で公募情報なし。
議会会期前の動きを見ると、12月の補正予算で新規補助金が積まれることがある。例年12月議会後に翌年度の予算案が固まるため、11月から12月にかけて茨城県産業戦略部のガイドブックページや産業戦略部のメールマガジンを定期的に確認しておくことを勧める。
問い合わせ先
- いばらきチャレンジ基金事業:茨城県産業戦略部 中小企業課 経営支援室 TEL: 029-301-3530
- デジタルスキル習得支援事業補助金:茨城県産業戦略部 産業人材育成課 TEL: 029-301-3554
- 中小規模事業所省エネ対策設備導入補助金:茨城県生活環境部 環境対策課 TEL: 029-301-2960
- いばらき業務改善奨励金:茨城県産業戦略部 労働政策課 TEL: 029-301-3649
- 補助金全般の相談窓口:茨城県産業戦略部 産業政策課 TEL: 029-301-3515 / メール: shorobu1@pref.ibaraki.lg.jp
FAQ
個人事業主はいばらきチャレンジ基金に申請できますか?
対象は「中小企業者」とされており、個人事業主を含むかどうかは要件の解釈によって変わる。申請前に茨城県産業戦略部 中小企業課(TEL: 029-301-3530)に自社の状況を相談することを強く勧める。個人事業主は並行して小規模事業者持続化補助金(国)も検討してほしい。
複数の補助金を同時に申請できますか?
制度ごとに「同一経費への重複計上禁止」のルールがある。A補助金で計上した経費はB補助金に計上できない。経費の対象が異なる場合は複数の補助金を並行申請することは可能。各制度の公募要領で「他の補助金との関係」の条項を必ず確認すること。
省エネ診断はどこで申し込めますか?
「中小規模事業所省エネルギー対策支援事業」の省エネ診断は茨城県が実施している。申込は茨城県生活環境部 環境対策課(TEL: 029-301-2960)または省エネ補助金の公式ページから。補助金申請より先に診断を受ける必要があるため、設備投資の計画がある場合は早めに診断の日程を確保しておく。
いばらき業務改善奨励金の上限額はいくらですか?
国の業務改善助成金の自己負担額の1/2が基本となるが、詳細な上限額は年度ごとに変更になる場合がある。2026年9月24日時点の正確な上限は公式ページ(または案内チラシPDF)で確認してほしい。
茨城県の補助金の公募情報をまとめて確認できる場所はありますか?
茨城県産業戦略部が毎年更新する「中小企業・小規模企業支援施策活用ガイドブック」が最も網羅性が高い。金融支援・経営支援・技術支援・人材育成支援・労働環境整備支援など全カテゴリの制度が一冊にまとまっている。産業政策課(TEL: 029-301-3515)への問い合わせでも案内してもらえる。
参考文献
- いばらきチャレンジ基金事業(茨城県)(2026-09-24 確認)
- 中小企業人材育成支援事業補助金(茨城県)(2026-09-24 確認)
- 中小規模事業所省エネ対策設備導入補助金(茨城県)(2026-09-24 確認)
- いばらき業務改善奨励金(茨城県)(2026-09-24 確認)
- 中小企業・小規模企業支援施策活用ガイドブック(茨城県)(2026-09-24 確認)






