Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)に申請するとき、公設試験研究機関(以下「公設試」)との連携は避けて通れません。公募要領を3回読んでみたら、審査項目の「研究開発体制」の中で公設試連携の実質性がかなりの配点を占めていることに気づきました。

令和8年度の公募要領でも「従たる研究等実施機関又はアドバイザーとして、大学・公設試等のA機関が必ず1者以上参画」と明記されています。ただ、この要件を形式的に満たすだけでは審査で見抜かれます。

うちで実際に取った時の話なんですけど、Go-Tech事業の申請準備で公設試の先生と最初に面談したとき「御社の研究テーマなら、うちの装置で○○の試験ができますよ」と言われて、そこから具体的な共同研究計画に落とし込むまでに3回のミーティングが必要でした。

今回は、公設試連携で「共同研究の実態がない」と判断されて不採択になる3つのパターンを、公募要領の審査項目と突き合わせて解説します。

パターン1:名義貸し型——公設試の名前だけ借りて研究計画に実質的関与がない

最も多い失敗パターンがこれです。知人経由で公設試の研究員に連絡を取り、「名前を貸してください」とお願いして共同体に入ってもらうケース。

なぜ審査で見抜かれるのか

公募要領の審査項目(技術面)には「研究開発を適切に実施可能な研究開発体制を有しているか」とあります。審査員が見ているのは以下の3点です。

  • 公設試側の担当者名と専門分野が研究テーマと一致しているか
  • 公設試が担う工程が研究開発計画の中で具体的に記述されているか
  • 経費配分に公設試の活動が反映されているか(人件費・設備使用料等)

名義貸し型の申請書は、公設試の役割が「助言」「アドバイス」のみで、具体的な試験項目・測定手法・使用設備の記載がありません。審査員は年間何十件もの申請書を読んでいるので、この薄さは一目で分かります。

対策:最低3回のミーティングで研究計画を共同設計する

公設試との連携を実質的にするには、以下のステップが有効です。

  1. 初回面談:自社の研究テーマと公設試の保有設備・専門分野のマッチングを確認
  2. 2回目:具体的な試験項目・測定条件・スケジュールを共同で設計
  3. 3回目:申請書の研究開発計画部分を一緒にレビューし、公設試側の担当工程を明確化

朝のカフェで公募要領を読み込んでいるとき、「共同体における各機関の役割分担及び連携の仕方が具体的かつ適切であるか」という審査項目を見つけて確信しました。形だけの連携は通りません。

パターン2:初回面談だけ型——申請締切直前に1回会っただけで共同研究計画を書く

Go-Tech事業の応募締切は例年4月中旬です。令和8年度は4月17日(金)17時厳守でした。2月の公募開始から締切まで約2か月。この期間中に公設試と1回だけ面談して、あとはメールだけで申請書を仕上げるパターンです。

何が問題か

1回の面談では、以下が詰め切れません。

  • 公設試側の設備予約状況(他の企業も使うため、希望時期に空いているとは限らない)
  • 試験条件の詳細(温度・圧力・サンプル数など、研究計画に書くべき数値)
  • 中間評価時の成果物の定義(何をもって「連携の成果」とするか)

審査員は申請書の研究開発計画を読んだとき、「この試験条件は実際に公設試と擦り合わせた数値か、それとも申請者が一方的に書いた理想値か」を見分けます。実際に擦り合わせた計画書には、設備の型番や測定可能範囲など、公設試側からしか出てこない情報が含まれています。

対策:公募開始と同時に公設試へアプローチする

Go-Tech事業の公募開始は例年2月中旬です。このタイミングで動き始めても遅くはありませんが、理想は公募開始の1〜2か月前(12月〜1月)に公設試への初回コンタクトを済ませておくことです。

テンプレで時短すると、面談前に以下を1枚にまとめて持参するだけで初回の密度が全然違います。

  • 自社の技術課題(現状と目標のギャップ)
  • 必要な試験・測定の概要
  • 希望スケジュール(3年間の研究開発フェーズ案)

パターン3:研究テーマ不一致型——公設試の専門分野と自社の研究開発テーマがズレている

これは意外と気づきにくいパターンです。「近くの公設試だから」「知り合いがいるから」という理由で連携先を選んだ結果、公設試の専門分野と自社の研究テーマが微妙にズレているケース。

具体例

たとえば、食品加工の新技術を開発したい中小企業が、材料系が強い工業技術センターに連携を依頼するケース。工業技術センター側には食品加工の専用設備がなく、結局「材料の物性試験だけ担当」という形になります。

審査項目の「研究開発目標の妥当性」において、公設試の専門性と研究テーマの整合性は重要な判断材料です。公設試側が「自分たちの本業と違う」テーマに関わっていると、審査員には「この連携に実質的な意味があるのか」と映ります。

対策:Go-Techナビで連携機関を探す

中小企業庁が運営する「Go-Techナビ」では、過去の採択案件で連携した研究機関の情報が公開されています。自社の研究テーマに近い過去の採択案件を検索し、そこで連携していた公設試にアプローチするのが確実です。

また、各都道府県の産業技術センターや工業技術センターのWebサイトには、研究分野や保有設備の一覧が掲載されています。ここで自社テーマとの適合性を事前確認してから面談に臨みましょう。

公設試連携を実質化するための3つのチェックリスト

申請書を提出する前に、以下の3点を確認してください。

チェック項目確認内容NG例
役割の具体性公設試が担う試験・測定が具体的に記載されているか「助言を行う」のみ
設備・手法の記載使用設備の型番・測定手法・条件が書かれているか「必要に応じて設備を利用」
スケジュールの整合公設試の担当工程が研究計画のタイムラインに組み込まれているか公設試の活動時期が不明確

公設試連携がうまくいく中小企業の共通点

Go-Tech事業で採択されている企業の申請書を見ると、公設試連携がうまくいっているケースには共通点があります。

  1. 申請前から公設試と取引実績がある:依頼試験や技術相談で面識がある状態から共同研究に発展
  2. 研究開発の一部を本気で公設試に任せている:自社にない装置・ノウハウを公設試が補完する構造
  3. 中間報告や論文を共同で出す計画がある:連携の「出口」が明確

逆に言えば、公設試と初めて会うのが申請準備のタイミングだと、この3つを満たすのは時間的にかなり厳しい。研究開発系の補助金を視野に入れている企業は、申請する・しないに関わらず、日頃から地元の公設試と関係を作っておくことが採択の近道です。

まとめ:公設試連携は「申請書を書く前」に勝負がついている

Go-Tech事業の公設試連携で不採択になる3パターンを整理しました。

  1. 名義貸し型:具体的な担当工程・経費配分なし → 審査で即バレ
  2. 初回面談だけ型:試験条件の擦り合わせ不足 → 計画の具体性欠如
  3. テーマ不一致型:公設試の専門と研究テーマのズレ → 連携の必然性が説明できない

共通するのは「申請書を書き始めてから公設試に連絡している」という点です。採択される企業は、公募開始の2〜3か月前から動いています。

令和8年度のGo-Tech事業(通常枠)は採択予定120件程度。採択率は例年50%前後です。この50%に入るために、公設試との連携を形式ではなく実質で固めることが、最も費用対効果の高い準備です。

FAQ

Q1. 公設試ではなく大学と連携してもGo-Tech事業に申請できますか?

はい。公募要領では「大学・公設試等」のA機関として大学も認められています。ただし大学の場合、教授の研究室単位での連携になるため、スケジュール調整に時間がかかる傾向があります。

Q2. 公設試との面談は無料ですか?

初回の技術相談は多くの公設試で無料です。都道府県の産業技術センター・工業技術センターに「技術相談」として問い合わせてください。依頼試験に進む段階で費用が発生する場合があります。

Q3. 複数の公設試と同時に連携できますか?

できます。共同体の構成員として複数のA機関を入れることが可能です。ただし、各機関の役割分担が明確でないと逆に「船頭多くして船山に上る」と判断されるリスクがあります。

Q4. Go-Tech事業に不採択だった場合、同じ公設試と翌年度に再申請できますか?

再申請は可能です。不採択のフィードバックを踏まえて研究計画を修正し、翌年度に再挑戦する企業は少なくありません。公設試側も継続的な関係を歓迎するケースが多いです。

Q5. 公設試の研究員に申請書の書き方を相談しても良いですか?

多くの公設試では、Go-Tech事業の申請支援を業務の一環として行っています。特に過去にGo-Tech事業(旧サポイン事業)で連携実績がある公設試であれば、審査で何が見られるかを熟知しています。

参考文献