Xを眺めていると「ディープテックの助成金探し、最初の壁は"どの制度から見るか"だと思います」という投稿が流れてきました。わかります、めちゃくちゃわかります。研究開発系の補助金は制度が多すぎて、公募要領を読む前に「そもそもどの公募要領を読めばいいのか」で詰むんですよね。

うちで実際に取った時の話なんですけど、最初にGo-Tech事業の公募要領を手に取ったのは「たまたま知人に勧められたから」でした。あとからNEDOのディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)やSBIR制度の存在を知って、「先にこっちを検討すべきだったのでは」と冷や汗をかいた経験があります。

この記事では、研究開発系の補助金を「どれから検討すべきか」を判断する3つの軸を整理します。Go-Tech事業、NEDO DTSU、SBIR制度、ものづくり補助金の4制度を横断比較しますので、自社の研究開発フェーズに合った制度選びの参考にしてください。

研究開発系補助金の「制度乱立」問題――なぜ迷うのか

2026年5月時点で、中小企業が研究開発に使える主な補助金・助成金は以下の通りです。

制度名所管補助上限補助率期間
Go-Tech事業(通常枠)中小企業庁9,750万円(3年計)2/3以内最大3年
Go-Tech事業(出資獲得枠)中小企業庁3億円(3年計)2/3以内最大3年
NEDO DTSUNEDO数億円規模2/3〜定額フェーズ別
SBIR制度(連結型フェーズ1)内閣府→各省庁1,500万円定額〜年度末
ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)中小企業庁1,250万円1/2〜2/310か月

金額も期間もバラバラ。しかも申請ルートがe-Rad、Jグランツ、GビズIDと制度ごとに異なるため、「とりあえず全部調べる」のは現実的ではありません。朝カフェで公募要領を読む時間にも限りがあります。

そこで、最初に確認すべき3つの判断軸で絞り込みましょう。

判断軸1:自社の研究開発は「どのフェーズ」にあるか(TRL基準)

公募要領を3回読んでみたら気づくことがあります。各制度は暗黙的に技術成熟度(TRL: Technology Readiness Level)の異なる段階を対象としているのです。

  • TRL 1〜3(基礎研究・概念実証) → NEDO DTSU、SBIR制度フェーズ1
  • TRL 4〜6(応用研究・試作品開発) → Go-Tech事業
  • TRL 7〜9(量産前検証・設備導入) → ものづくり補助金

たとえば、まだ原理検証(PoC)の段階なのにGo-Tech事業に申請すると、審査項目の「事業化計画」で求められる市場規模や売上見通しの具体性が足りず不採択になりがちです。逆に、試作品がすでにできていてあとは量産設備だけという段階でSBIR制度のフェーズ1に申請しても「PoCとしてはオーバースペック」と判断されます。

自社の技術が今どの段階にあるかを最初に言語化することが、制度選びの出発点です。

判断軸2:申請ルートと事前登録に何が必要か

見落としがちなのが申請ルートの違いです。制度ごとに申請先が異なり、事前登録の所要期間もバラバラです。

制度申請ルート事前登録登録所要日数
Go-Tech事業e-Rade-Rad研究者登録+機関登録約10営業日
NEDO DTSUNEDO専用フォーム法人登記のみ即日〜数日
SBIR制度(連結型)e-Rade-Rad研究者登録+機関登録約10営業日
ものづくり補助金Jグランツ(GビズID)GビズIDプライム約2週間

Go-Tech事業とSBIR制度はどちらもe-Rad経由です。e-Radの機関登録は最短でも10営業日かかるため、「公募を見つけてから登録する」では間に合わないケースが頻発します。令和8年度のGo-Tech事業は2月16日公募開始、4月17日締切でしたから、2月に初めてe-Radの存在を知った企業は実質2週間しか申請書を書く時間がなかったことになります。

まだどの制度に申請するか決まっていない段階でも、e-RadとGビズIDプライムの両方を取得しておくのが鉄則です。登録はタダですし、使わなくてもペナルティはありません。

判断軸3:大学・公設試との連携体制があるか

Go-Tech事業は「中小企業等が大学・公設試等の研究機関と連携して行う研究開発」を支援する制度です。つまり、連携先の研究機関が確保できていることが申請の前提条件になります。

地場ベンチャー仲間との勉強会で話題になるのですが、「公設試との連携」を甘く見て名義だけの共同研究体制を組むと、審査で見抜かれます。Go-Tech事業の公募要領を読むと、連携機関との役割分担と研究計画の具体性が審査項目に明記されています。最低3回のミーティング実績がないと書面上の説得力が出ないというのが、複数の採択・不採択事例を見てきた実感です。

一方、NEDO DTSUやSBIR制度フェーズ1は、スタートアップ単独でも申請可能です。連携機関を確保するのに時間がかかる場合は、先にこちらで概念実証の資金を確保し、実績を作ってからGo-Tech事業に進むというルートが現実的です。

ものづくり補助金も単独申請が可能ですが、対象が「設備投資による生産性向上」なので、研究開発の初期段階には向きません。

3軸を組み合わせた制度選びフローチャート

上記の3軸を組み合わせると、以下のフローで最適な制度が絞り込めます。

  1. 原理検証がまだ終わっていない(TRL 1〜3)
    • 省庁トピックに合致するテーマがある → SBIR制度(連結型フェーズ1)(公募期間が約2週間半と短いため、毎年2月のトピック説明会への参加が実質スタートライン)
    • ディープテック分野で事業化を目指す → NEDO DTSU(2026年度第10回は6月以降公募予定)
  2. 試作品開発・応用研究の段階(TRL 4〜6)
    • 大学・公設試との連携体制がある → Go-Tech事業(通常枠9,750万円 or 出資獲得枠3億円)
    • 連携機関がまだない → まずNEDO DTSUやSBIRで実績を作り、その間に公設試との関係を構築
  3. 量産前の設備導入段階(TRL 7〜9)
    • 特注研究開発設備 → ものづくり補助金(グローバル枠は海外展開前提、採択率26.7%とハードル高め)
    • 汎用設備のデジタル化 → ものづくり補助金の成長分野進出類型 or IT導入補助金

よくある「制度選び間違い」3パターン

パターン1:ものづくり補助金で研究開発費を賄おうとする

ものづくり補助金は「設備投資」が主軸です。研究開発のための人件費・外注費の比率が高い申請は、審査で「設備投資による生産性向上」の観点から低評価になりがちです。研究開発費が中心なら、Go-Tech事業かNEDO DTSUを検討しましょう。

パターン2:Go-Tech事業に公設試なしで突撃する

公設試との連携は「あれば加点」ではなく「ないと実質不採択」です。経営デザインシートの作成にも最低2週間はかかりますし、連携先との研究計画のすり合わせまで含めると、公募開始の2か月前から動き始めないと間に合いません。

パターン3:SBIR制度の省庁トピックを確認せずに申請する

SBIR制度は省庁横断で運用されますが、各省庁がそれぞれ研究開発テーマを指定しています。自社の技術がどの省庁のトピックに合致するかを確認しないまま申請すると、テーマ不適合で書類審査すら通りません。総務省はBeyond5G、厚労省は障害者支援機器、農水省は食品工場スマート化など、省庁ごとにテーマが大きく異なります。

今すぐやるべき3つのアクション

  1. e-RadとGビズIDプライムを両方取得する(どちらも無料・どの制度に申請するか未定でもOK)
  2. 自社の技術のTRLを1枚のシートに書き出す(「何が検証済みで、何が未検証か」を明確にする)
  3. 最寄りの公設試に「連携可能性」を打診する(Go-Tech事業を将来的に視野に入れるなら、関係構築は早いほど有利)

テンプレで時短すると、これら3つの準備は1〜2週間で完了します。制度選びで悩む時間を減らして、申請書の中身に集中できる状態を作りましょう。

FAQ

Q1. Go-Tech事業とものづくり補助金は併用できますか?

同一の設備・経費に対する二重受給はできません。ただし、Go-Tech事業で試作品を開発し、その後ものづくり補助金で量産設備を導入するという「時期をずらした併用」は可能です。補助事業の実施期間が重ならないように計画しましょう。

Q2. NEDO DTSUの採択率はどのくらいですか?

公式には採択率を公表していませんが、過去の公募実績から推定すると20〜30%前後とされています。ただし、ディープテック分野の技術的新規性と事業化見通しが審査の中心であり、単に採択率だけで判断すべきではありません。

Q3. e-Radの登録は法人でないとできませんか?

個人事業主でも登録可能ですが、Go-Tech事業は中小企業(法人)が主な対象です。個人事業主で研究開発補助金を検討する場合は、SBIR制度のJST枠やものづくり補助金の個人事業主枠を先に確認することをおすすめします。

Q4. 公設試との連携はどうやって始めればいいですか?

各都道府県の産業技術センター(公設試)には技術相談窓口があります。まずは自社の技術課題を簡潔にまとめて電話で相談予約を取りましょう。いきなり「Go-Tech事業の連携先になってほしい」と切り出すより、「この技術課題について相談したい」から入る方がスムーズです。

Q5. 補助金の申請を見送った方がいいケースはありますか?

研究開発系補助金は経費管理が複雑です。Xでも「補助金用の管理が大変すぎて、申請を見送る会社もいる」という声がありました。管理コストを含めた費用対効果がマイナスになるなら、自己資金での開発を選んだ方が結果的にスピードが出るケースもあります。特に、補助額が500万円以下で管理工数が大きい場合は慎重に検討しましょう。

参考文献

  • 中小企業庁「令和8年度 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)公募要領」(2026年2月16日公開)
  • NEDO「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)2026年度公募予告」
  • 内閣府 SBIR制度特設サイト「2026年度 SBIR推進プログラム(連結型)公募要領」
  • ものづくり補助金事務局「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第22次・第23次公募要領」(2026年2月修正版)