Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)に申請して不採択になった経験、ありませんか。令和8年度の通常枠は採択予定件数が約120件と狭き門で、多くの中小企業が再挑戦を検討するタイミングです。
ところが、公募要領を3回読んでみたら、翌年度に再申請して「また不採択」になる中小企業には共通する3つのパターンがあることに気づきました。うちで実際に取った時の話なんですけど、Go-Tech事業は申請準備に最低3〜4ヶ月かかる制度なので、不採択後の動き方を間違えると準備コストがまるごと無駄になります。
この記事では、Go-Tech事業で不採択になった後の再申請で中小企業が陥りがちな3つの失敗パターンと、それぞれの具体的な対策を解説します。
パターン1:不採択理由を分析せず「文章の修正だけ」で翌年度に再提出する
Go-Tech事業の審査は技術面・事業化面・政策面の3軸で行われます。不採択になった場合、多くの中小企業は「文章が悪かった」と考えて表現を整えることに注力しますが、これが最も多い失敗パターンです。
根本的な問題は、3つの審査軸のどこで減点されたかを特定していないこと。技術面の革新性が不足していたのか、事業化計画の経済効果の根拠が弱かったのか、政策面との整合性が取れていなかったのか。この切り分けをしないまま申請書全体を「なんとなく」修正しても、減点箇所が改善されないまま再提出することになります。
対策:公募要領の審査項目と申請書を1対1で突き合わせる
不採択通知を受け取ったら、まず公募要領の審査項目(技術面・事業化面・政策面の各チェックポイント)を印刷し、自分の申請書の該当箇所と3色蛍光ペンで対応づけてください。朝のカフェで1〜2時間集中すれば終わります。
特に見落としやすいのが以下の3点です。
- 技術面:「国際競争力強化につながるか」の記述が業界一般論にとどまっている
- 事業化面:付加価値額の計画値に積み上げ根拠(決算書ベース)がない
- 政策面:経済産業政策・中小企業政策との接続が1〜2行で済まされている
テンプレで時短すると、「審査項目×申請書対応表」をNotionやExcelで一覧化しておけば、修正箇所の優先順位が明確になります。文章を直す前に、構造を直すのが再申請の鉄則です。
パターン2:公設試連携を前年と同じ体制・同じ内容で再申請する
Go-Tech事業は大学・公設試等との共同研究体制が実質的な必須要件です。不採択になった翌年度に同じ公設試と同じ連携内容で再申請するケースが非常に多いのですが、ここに3つの落とし穴があります。
落とし穴1:公設試の担当者が年度末に異動している
公設試験研究機関の研究員は、年度末の人事異動で担当が変わることが珍しくありません。前年度に話を通していた担当者が異動し、後任が研究テーマの詳細を把握していない状態で「前年度の連携体制をそのまま記載」すると、審査で連携の実質性を疑われます。
落とし穴2:前年の連携が名義貸し型だった
審査員は、公設試側の担当工程・使用設備の型番・経費配分の3点が具体的に記載されているかをチェックします。前年度に「名義だけ借りた」連携で不採択になった場合、翌年も同じ構造なら同じ理由で落ちます。
落とし穴3:1年間で公設試側の設備環境が変わっている
公設試は毎年度の予算で設備を更新・廃止することがあります。申請書に記載した設備型番が、翌年度には使えなくなっている可能性も考慮が必要です。
対策:不採択後2週間以内に公設試との振り返りミーティングを設定する
再申請を検討するなら、不採択通知を受けてから2週間以内に公設試の担当者(または後任)と振り返りミーティングを行ってください。確認すべきは以下の3点です。
- 担当研究員の継続可否と翌年度の研究テーマとの適合性
- 使用予定設備の翌年度の利用可能状況
- 前年度の連携設計で審査上弱かった箇所の共同分析
公設試との連携は公募開始の2〜3ヶ月前にアプローチするのが理想です。Go-Techナビで連携先候補を探し直すことも選択肢に入れてください。前年度の公設試に固執する必要はありません。
パターン3:e-Rad・経営デザインシート・研究開発内容説明書を前年のまま使い回す
前年度にe-Radの登録や経営デザインシートの作成に苦労した中小企業ほど、翌年度は「去年の書類をそのまま使おう」と考えがちです。しかし、これが3つ目の失敗パターンです。
e-Radの研究実績が1年分更新されていない
e-Rad(府省共通研究開発管理システム)の研究者情報には、学会発表・論文・特許出願の実績を登録できます。不採択になった年度から1年間で新たな研究実績があるにもかかわらず、e-Radの情報を更新していない中小企業が少なくありません。審査員はe-Radの研究者情報を参照して技術的能力を評価するため、実績が古いままだと能力の裏付けが弱くなります。
経営デザインシートの「これまでの姿」が1年前のまま
内閣府の経営デザインシートは「これまでの姿」「これからの姿」「移行戦略」の3構造で構成されます。不採択であっても、この1年間で試作品の検証データ、新たな特許出願、公設試との共同研究で得た知見など、「これまでの姿」に追記すべき知的資産が蓄積されているはずです。
特に「これまでの姿」の資源欄に特許番号や公設試連携テーマを具体的に記載するだけで、審査員から見た技術的蓄積の説得力が大きく変わります。
研究開発内容説明書の技術的到達目標が変わっていない
不採択になった理由が技術面にある場合、研究開発内容説明書の技術的到達目標(数値指標・測定方法・達成水準の根拠)を見直す必要があります。1年間で技術水準が進歩しているなら、到達目標もそれに応じて引き上げるか、中間目標を精緻化すべきです。前年と同じ目標では、「1年間何もしていなかった」と審査員に受け取られるリスクがあります。
対策:再申請1ヶ月前にe-Rad・経営デザインシート・説明書の3点を更新する
再申請を決めたら、以下の順序で書類を更新してください。
- e-Rad:研究者情報の実績欄に直近1年の学会発表・論文・特許を追加(所要1〜2日)
- 経営デザインシート:「これまでの姿」に1年間で蓄積した知的資産を追記し、「これからの姿」と「移行戦略」を研究開発計画書と整合させる(所要1〜2週間)
- 研究開発内容説明書:技術的到達目標の数値指標を最新のTRL段階に合わせて更新し、年度別中間目標の達成判定基準を精緻化する(所要2〜3週間)
再申請のスケジュール設計:不採択通知から逆算する
Go-Tech事業の公募期間は例年2〜3ヶ月程度です。令和8年度は2026年2月16日〜4月17日が公募期間でした。翌年度も同時期と想定すると、不採択通知(例年8〜9月頃)から翌年2月の公募開始まで約5〜6ヶ月の準備期間があります。
この期間を以下のように使い分けるのが現実的です。
- 不採択通知〜2週間以内:公設試との振り返りミーティング、審査項目突き合わせ分析
- 1〜2ヶ月目:新たな公設試候補の探索(Go-Techナビ活用)、連携設計の再構築
- 3〜4ヶ月目:経営デザインシート・研究開発内容説明書の改訂
- 5ヶ月目:e-Rad情報更新、公設試との申請書共同レビュー
- 公募開始後:最終調整・提出
Go-Tech以外の研究開発補助金への転進も検討する
Go-Tech事業で不採択になった場合、自社の技術成熟度(TRL)を再評価した上で、別の研究開発補助金への転進も検討に値します。
- TRL 1〜3(基礎研究段階):SBIR推進プログラムやNEDO DTSUで概念実証の資金を確保
- TRL 4〜6(応用研究段階):Go-Tech事業への再挑戦が最適
- TRL 7〜9(実用化段階):ものづくり補助金(2026年度からは「新事業進出・ものづくり補助金」)での量産設備導入
研究開発が1年間で進んでTRLが上がっている場合、Go-Techに固執するよりもものづくり補助金に切り替えたほうが採択確率が上がるケースもあります。制度選びは「自社の技術がどの段階にあるか」で決めるのが鉄則です。
よくある質問(FAQ)
Q1. Go-Tech事業は同じテーマで何回まで再申請できますか?
A. 公募要領上、再申請の回数に明確な制限はありません。ただし、同じ内容をそのまま再提出しても採択される可能性は低いため、審査項目との突き合わせに基づく構造的な改善が必須です。過去に採択された研究テーマと重複する場合は不採択になるため、新規性の整理も必要です。
Q2. 不採択理由は事務局から教えてもらえますか?
A. Go-Tech事業では、不採択者に対して審査結果の詳細な開示は行われないのが通例です。そのため、自力で公募要領の審査項目と申請書を突き合わせて、減点箇所を推定する作業が重要になります。地域の経済産業局や中小企業支援機関に相談すれば、一般的なアドバイスを得られることもあります。
Q3. 前年度の公設試と別の公設試に変更して再申請できますか?
A. 可能です。Go-Techナビで研究テーマに合う公設試を検索し、新たな連携先を探すことができます。ただし、公設試との関係構築には最低3回のミーティング(マッチング確認→試験条件設計→申請書共同レビュー)が必要なため、公募開始の2〜3ヶ月前にはアプローチを始めてください。
Q4. Go-Tech事業とものづくり補助金に同時に申請できますか?
A. 制度上、異なる補助金への同時申請は可能です。ただし、同一の研究テーマ・同一の経費で二重に補助を受けることはできません。Go-Tech事業は研究開発段階(TRL 4〜6)、ものづくり補助金は実用化段階(TRL 7〜9)と棲み分けるのが基本です。テーマが重なる場合は、経費の切り分けと事業計画の整合性に注意してください。
まとめ
Go-Tech事業で不採択になること自体は珍しくありません。採択予定件数120件に対して多数の応募がある競争的な制度です。重要なのは、不採択の原因を正しく分析し、翌年度の再申請で構造的な改善を行うこと。文章を直すだけ、公設試をそのまま維持するだけ、書類を使い回すだけでは、同じ結果を繰り返すリスクが高くなります。
不採択通知を受けた日が、次の採択に向けた準備のスタートラインです。公募要領を3回読んで、審査項目との突き合わせから始めてみてください。






