Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)の申請で、最も力を入れるべき書類は何か。答えは「研究開発内容等説明書」、つまり提案書様式に沿った15ページ程度の事業計画書です。
この説明書は外部有識者が「技術面」「事業化面」「政策面」の3つの軸で採点する審査の設計図であり、内容の充実度が合否を分けます。令和5年度の採択率は通常枠で約50.0%、出資獲得枠では約30.0%。半分以上が不採択になる中で、僕の周りで落ちた企業の計画書を読ませてもらうと、技術的到達目標の書き方で共通するミスが3つに集約されることに気づきました。
公募要領を3回読んでみたら、審査項目の「技術面」には「研究開発目的が明確であり、研究開発を適切に実施可能な研究開発体制を有しているか」と書いてあります。「目的が明確」とは何か。ここを掘り下げずに15ページを埋めた企業が不採択になるわけです。
この記事でわかること
- Go-Tech事業の研究開発内容説明書で技術的到達目標を具体化する方法
- 年度別の中間目標と達成判定基準を審査員に伝わる形で書くコツ
- 「鍵となる技術」と川下ニーズの因果チェーンを途切れさせない構成術
前提:Go-Tech事業の審査項目と研究開発内容説明書の構造
Go-Tech事業の審査は、大きく3つの軸で行われます。
| 審査軸 | 主な審査項目 |
|---|---|
| 技術面 | 国際競争力強化への貢献、研究開発目的の明確性、研究開発体制の適切性、技術的新規性・独創性 |
| 事業化面 | 経済効果の期待度、市場ニーズの把握、コスト面での市場導入可能性 |
| 政策面 | 各政策に沿った計画であるか |
研究開発内容説明書は約15ページの提案書様式で、この中に研究開発の目的・内容・実施体制・事業化計画・経費計画をすべて記載します。補助金額は単年度4,500万円以下(2年間合計7,500万円以下、3年間合計9,750万円以下)と大型ですが、その分、審査員は「この研究開発は本当に達成可能か」「達成したら本当に事業化できるか」を厳しく見ます。
以下、僕が周囲の不採択事例と自分の申請経験から整理した3つの書き方ミスを解説します。
書き方ミス①:技術的到達目標を「定性的」にしか書いていない
よくある書き方
「本研究開発により、従来よりも高精度な検査技術を確立する」
「新しい製造プロセスにより、品質の向上を実現する」
こういう書き方をした計画書が、審査で落ちます。理由は単純で、「どのくらい高精度なのか」「品質の何がどれだけ向上するのか」が数値で示されていないからです。
審査員が見ているポイント
公募要領の技術面の審査項目では「研究開発目的が明確であり」と求められています。「明確」の最低ラインは数値目標の設定です。審査員は各分野の有識者ですが、15ページの中で「定性的な抱負」と「定量的な到達目標」を瞬時に区別します。
具体化のフレームワーク
技術的到達目標を具体化するには、以下の3点セットを最低限押さえてください。
| 要素 | 記載例 |
|---|---|
| 数値指標 | 検出精度99.5%以上(現行92.3%)、加工時間30%短縮 |
| 測定方法 | JIS Z 8801に準拠した粒度分析、引張試験(JIS K 7161) |
| 達成水準の根拠 | 予備実験データ、先行文献の到達値、川下企業のスペック要求 |
うちで実際に取った時の話なんですけど、最初に出した計画書では「高い歩留まりを達成する」としか書いていなかったところを、「歩留まり95%以上(現行83%、業界トップ91%)」と書き直し、測定方法に「全数検査ラインでのロット別集計」を明記した。たったこれだけの修正で審査員への訴求力がまったく変わりました。
注意点:「日本初」でなくても技術的新規性は認められる
Go-Tech事業の技術面審査では「技術的新規性・独創性・革新性」が問われますが、公募要領をよく読むと「既存技術の組み合わせ、創意工夫やプロセスの改善等も評価対象」と明記されています。つまり「日本初の技術」である必要はなく、川下課題を解決する技術的到達目標が数値で具体化されていれば評価されます。
書き方ミス②:年度別の中間目標に「達成判定基準」がない
よくある書き方
1年目:基礎研究(素材の特性評価)
2年目:応用研究(試作品の製作)
3年目:実証研究(フィールドテスト)
一見きれいに整理されていますが、各年度の終了時点で「何が達成されていればOKなのか」が書かれていません。これでは審査員は「研究が行き詰まった時にどう判断するのか」が見えない。Go-Tech事業は最長3年間の大型案件ですから、中間時点での達成判定基準は採択の必須条件です。
中間目標の書き方テンプレート
テンプレで時短すると、各年度の目標を以下の4項目で整理するのが鉄板です。
| 項目 | 1年目の記載例 |
|---|---|
| 研究テーマ | ナノ粒子分散技術の最適化 |
| 到達目標 | 分散安定性72時間以上(沈降率5%未満) |
| 達成判定基準 | JIS K 5101に準拠した沈降試験で、3ロット連続で基準値クリア |
| 未達時の対応 | 分散剤の種類を変更し追加検証(予備候補3種を特定済み) |
特に「未達時の対応」を書いている計画書はほとんど見かけませんが、審査員に対して「リスクを把握した上で研究を進める体制がある」と伝えるには最も効果的な記載です。
公設試連携との整合性チェック
Go-Tech事業では公設試(公設試験研究機関)との連携が実質必須です。中間目標を設定する際に、公設試が担当する工程と中間目標の達成判定が整合しているかを確認してください。
例えば「1年目の達成判定基準に引張試験が含まれるのに、公設試との試験スケジュールが2年目になっている」という不整合は、審査員が真っ先にチェックする項目です。公設試との連携スケジュールは申請書を書き始める前、公募開始の2〜3ヶ月前から擦り合わせておくのが現実的なラインです。
書き方ミス③:「鍵となる技術」と川下ニーズの因果チェーンが切れている
よくある書き方
「本研究で開発するAI画像検査技術は、製造業の品質管理に革新をもたらす。」
この文章には「誰の」「どんな課題を」「どう解決するか」が書かれていません。Go-Tech事業の審査で最も差がつくのは、実はこの「鍵となる技術」と「川下ニーズ」の接続です。
審査員が見る因果チェーン
Go-Tech事業の公募要領では、審査項目の技術面で「我が国製造業及びサービス業の国際競争力強化につながる」研究開発であることが求められています。つまり審査員は「この技術が完成したら、どの川下産業の、どの工程が、どう改善されるのか」を一本のストーリーとして読みます。
因果チェーンが切れる典型的な3パターンは以下の通りです。
| パターン | 問題点 | 改善策 |
|---|---|---|
| 川下ニーズが「業界全体の課題」止まり | 抽象的すぎて自社技術との接点が見えない | 特定の川下企業名(A社)と具体的な困りごと(不良率○%)を記載 |
| 技術開発と事業化の間に飛躍がある | 「開発完了→すぐ量産」のように見える | 川下評価(研究終了後1年以内)のステップを明記 |
| コスト優位性の根拠がない | 技術は優れていても市場導入できるか不明 | 試作段階の原価データ3点セット(仕入単価・加工時間実測値・量産想定単価)を提示 |
朝のカフェで公募要領を読み直していて気づいたんですが、Go-Tech事業の公募要領には「川下製造業者等のニーズに基づき」という表現が繰り返し出てきます。川下ニーズとの接続は審査項目の技術面だけでなく事業化面にも跨る横断的な論点であり、ここが弱い計画書は両方の軸で減点されます。
TRL(技術成熟度)で自社の立ち位置を整理する
因果チェーンを書くうえで効果的なのが、TRL(技術成熟度レベル)で自社の現在地と到達点を整理する方法です。Go-Tech事業はTRL 4〜6程度(基礎研究完了〜実用化検証段階)の技術が対象範囲の中心であり、TRL 1〜3(原理確認段階)であればNEDO DTSUやSBIR制度の方が適しています。
計画書の中で「現在TRL 3(実験室レベルでの原理実証完了)→研究終了時にTRL 6(実環境でのパイロット実証完了)」と明記すると、審査員は研究開発の全体像を一目で把握できます。
3つのミスに共通する根本原因
ここまで3つの書き方ミスを見てきましたが、根本原因は1つです。「研究開発内容説明書を論文のように書いてしまう」こと。
Go-Tech事業の説明書は、審査員に「この研究開発は投資に値する」と判断してもらうための設計図です。技術の面白さを語るのではなく、「何を(数値目標)」「いつまでに(年度別中間目標)」「誰のために(川下ニーズ)」達成するのかを構造的に書く。これが15ページの使い方です。
僕がGo-Tech事業の公募要領を3色蛍光ペンで読み込んだときに体系化した5つの不採択パターンのうち、今回の「技術的到達目標の書き方」は最も基本的でありながら、最もページ数を割く中核部分です。ここを押さえた上で、公設試連携の実質化と経営デザインシートの移行戦略を詰めていけば、計画書全体の整合性が格段に上がります。
実践チェックリスト
研究開発内容説明書を提出する前に、以下の5項目を確認してください。
- 技術的到達目標に数値指標・測定方法・達成水準の根拠の3点セットがあるか
- 年度別の中間目標に「達成判定基準」と「未達時の対応」が書かれているか
- 川下ニーズが特定企業・特定工程レベルまで具体化されているか
- 公設試の担当工程と中間目標のスケジュールが整合しているか
- TRLの現在地と到達点が明記されているか
FAQ
Q1. Go-Tech事業の研究開発内容説明書は何ページまで書けますか?
A. 提案書様式に沿った15ページ程度が目安です。公募要領では「指定の提案様式を用いた研究開発内容等説明書(事業計画書)」と記載されており、過去の様式を使ったり、大幅にページ数を超過したりすると審査対象外になる場合があります。
Q2. 技術的新規性は「日本初」でないと認められませんか?
A. いいえ。公募要領には既存技術の組み合わせ、創意工夫やプロセスの改善等も評価対象と明記されています。重要なのは川下課題を解決する技術的到達目標が数値で具体化されていることです。
Q3. Go-Tech事業の申請はどのシステムで行いますか?
A. e-Rad(府省共通研究開発管理システム)でのみ受け付けています。郵送・持参・FAX・メールでは申請できません。e-Radの研究機関登録に1〜2週間かかるため、申請検討開始と同時に登録手続きを始めてください。
Q4. Go-Tech事業の補助金額の上限はいくらですか?
A. 単年度あたり4,500万円以下で、2年間合計7,500万円以下、3年間合計9,750万円以下です。補助率は中小企業で2/3以内です。
Q5. 中間目標が未達の場合、補助金は返還になりますか?
A. 中間目標の未達だけで即座に返還とはなりませんが、中間評価で「研究の方向性を修正すべき」と判断された場合は計画変更が求められます。計画書に「未達時の対応」を事前に記載しておくことで、柔軟な対応が可能になります。
まとめ
Go-Tech事業の研究開発内容説明書で不採択になる中小企業の多くは、技術的到達目標の書き方で3つの共通ミスを犯しています。①数値目標の欠如、②年度別中間目標の達成判定基準の不在、③川下ニーズとの因果チェーンの断絶。いずれも公募要領の審査項目を3回読めば対策できるミスです。
15ページという限られた紙幅で審査員に「この研究開発は投資に値する」と伝えるには、論文ではなく設計図として書く。技術の面白さではなく、達成可能性と事業化への接続を構造的に示してください。






