Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)に申請する中小企業が最も見落としやすい審査ポイント。それは公設試験研究機関(以下「公設試」)との連携の中身だ。

令和8年度の採択結果を見ると、全国の通常枠は271件の申請に対して117件の採択。採択率は約43%で、半数以上が不採択になっている。うちで実際に取った時の話なんですけど、公設試連携の組み方を変えただけで申請書全体の評価が一変した。逆に言えば、公設試との連携が形だけだと、技術がどんなに面白くても審査で落ちる。

2026年7月現在、令和8年度の採択結果が公表された直後のタイミングで、不採択だった中小企業の多くが翌年度の再申請を検討し始めている。公募要領を3回読んでみたら、公設試連携で不採択になるパターンが3つに集約できた。この記事では、その3つの構造的な失敗と、公募開始前から仕込むべき対策を整理する。

Go-Tech事業で公設試連携が実質必須である理由

Go-Tech事業の公募要領には、従たる研究等実施機関またはアドバイザーとして「大学・公設試等のA機関が必ず1者以上参画していなければならない」と明記されている。中小企業が単独で申請することはできない。

しかも審査項目の技術面には「研究開発体制の適切性」「各機関の役割分担及び連携の仕方が具体的かつ適切であるか」という項目がある。つまり公設試の名前が申請書に載っているだけでは1点にもならない。審査員が見ているのは「この公設試と組む必然性があるか」「実際に何をやるのか」の2点だ。

通常枠の補助上限は年間最大4,500万円、3年間で最大9,750万円。中小企業の補助率は2/3以内で、大学・公設試等は定額補助(10/10)になる。これだけの規模の補助金だからこそ、連携体制の実質性が厳しく問われる。

パターン1:名義貸し型——担当工程なしで申請書に名前だけ載せている

最も多い失敗がこれ。公設試の研究員の名前が申請書に記載されているが、具体的にどの工程を担当するのかが書かれていない。

朝のカフェで公募要領を読み込んでいた時に気づいたんだけど、審査項目の「各機関の役割分担」は「具体的かつ適切であるか」と書いてある。「具体的」の最低ラインは3点セットだ。

  • 公設試側の担当工程(例:耐久試験の評価、材料分析、試作品の強度測定)
  • 使用する設備の型番(例:走査型電子顕微鏡 SEM-XXXX型)
  • 経費配分の内訳

この3点が申請書に書かれていないと、審査員には「名義を借りただけ」と映る。地場ベンチャー仲間の勉強会でも、名義貸しで落ちたと思われるケースが令和7年度だけで3件報告されていた。

対策は単純だが手間がかかる。公設試の担当研究員と最低3回のミーティングを重ねて、どの工程を・どの設備で・いくらの経費で実施するかを詰めてから申請書に落とし込む。これをやらずに「連携しています」とだけ書いても通らない。

パターン2:初回面談だけ型——試験条件の擦り合わせが不足している

名義貸しよりは一歩進んでいるが、公設試との面談が1回だけで終わっているパターン。初回面談で「協力します」と言質を取っただけで、試験条件や評価基準の擦り合わせが不十分なまま申請書を書いてしまう。

研究開発の審査で重視されるのは「再現性」と「客観性」。公設試が評価する試験項目と、中小企業が開発する製品・技術の性能指標がかみ合っていなければ、研究開発内容説明書の技術的到達目標に説得力が出ない。

たとえば中小企業が「引張強度30%向上」を到達目標に掲げているのに、公設試側の担当工程が「表面粗さ測定」だけだったとする。審査員が見たら「到達目標の検証を誰がやるのか不明」と判断される。到達目標と公設試の評価工程は1本の線でつながっていないといけない。

実務的には初回面談のあとに最低2回、計3回のミーティングが必要になる。

  1. 1回目(マッチング確認):研究テーマと公設試の専門分野が合っているかを確認する
  2. 2回目(試験条件設計):具体的な試験項目・使用設備・サンプル数・評価基準を決める
  3. 3回目(申請書共同レビュー):研究開発内容説明書の公設試記載部分を一緒に確認する

この3回を公募締切前に終わらせるには、公募開始の2〜3か月前に公設試へのファーストコンタクトが必要だ。令和8年度の公募期間は2026年2月16日〜4月17日だったので、12月〜1月には動き出さないと間に合わない計算になる。

パターン3:テーマ不一致型——公設試の専門と研究テーマがズレている

3つ目は、公設試の得意分野と中小企業の研究テーマが構造的にかみ合っていないパターン。地理的に近い公設試に相談したら「協力できます」と言われたので組んだが、実はその公設試にはテーマに直結する設備も専門研究員もいなかった、という事例が勉強会で報告されている。

テンプレで時短すると言いたいところだけど、公設試選びだけはテンプレ化できない。Go-Techナビ(中小企業庁が運営するマッチング支援サイト)で、自社の研究テーマに合った公設試を探すのが最も確実なルートだ。

テーマ不一致が審査でどう影響するかを整理すると、以下の3段階で減点が入る。

  • 技術面:公設試の保有設備が研究テーマの検証に使えないため、「研究開発体制の適切性」で低評価
  • 事業化面:公設試との連携が試作段階で途切れるため、「事業化に向けた具体的な計画」の説得力が下がる
  • 政策面:Go-Tech事業は川下製造業者のニーズに基づく研究開発が前提。公設試が川下とのパイプを持っていないと政策面でも弱くなる

士業に「素人が書く解説は誤情報の温床」と批判された日があった。その時から、法解釈は士業に譲り、自分は「読者の動線設計」と「実例ストック」に集中すると決めた。公設試選びも同じ構造で、技術の深い話は公設試の専門研究員に任せて、中小企業側がやるべきは「正しい公設試を見つけて、正しい順序で擦り合わせる」段取りの部分だ。

公募開始前から仕込むべき3つのアクション

令和9年度のGo-Tech事業に再挑戦する中小企業が今から動くべきことを3つに絞る。

アクション1:Go-Techナビで連携先候補を3者リストアップする(7〜8月)

Go-Techナビの技術シーズ検索で、自社テーマに近い公設試・大学を3者以上ピックアップする。1者に絞り込むのは面談後でいい。候補段階では「専門分野が合うか」「保有設備が使えるか」の2点だけを確認する。

アクション2:ファーストコンタクトと初回面談を年内に完了する(9〜12月)

公設試の研究員は年度末(1〜3月)に業務が集中する。12月までに初回面談を済ませておくと、1月以降に試験条件設計のミーティングに進める。3月に公募が始まってからアプローチしても、研究員のスケジュールが埋まっていて物理的に間に合わないことが多い。

アクション3:e-Radの研究者情報を最新化する(随時)

Go-Tech事業はe-Rad(府省共通研究開発管理システム)経由で申請する。e-Radへの研究者登録に10営業日〜2週間かかる。未登録の場合はすぐに手続きを開始すべきだ。登録済みの場合でも、直近1年の学会発表・論文・特許をe-Radの研究者情報に追加しておくと、審査での技術的能力の裏付けになる。

FAQ

Go-Tech事業で公設試ではなく大学と連携する場合も同じ注意点が当てはまる?

当てはまります。Go-Tech事業の公募要領では大学・高等専門学校・国立研究開発法人なども「A機関」として参画可能ですが、審査項目の「役割分担の具体性」「連携の適切性」は公設試と同じ基準で評価されます。名義貸し・テーマ不一致のリスクは大学連携でも同じです。

公設試との連携にかかる費用は補助対象になる?

Go-Tech事業では大学・公設試等の経費は定額補助(10/10)として別枠で計上されます。ただし中小企業が受け取る補助金額は共同体全体の補助金額の2/3以上でなければならないという配分ルールがあるため、公設試側の経費が大きくなりすぎると中小企業側の補助額が圧迫されます。2026年7月現在の公募要領に基づく情報です。

Go-Tech事業と、ものづくり補助金やSBIR制度はどう使い分ける?

技術成熟度(TRL)で判断するのが最も合理的です。TRL 1-3(基礎研究・概念実証段階)はSBIRやNEDO DTSU、TRL 4-6(試作・実証段階)はGo-Tech事業、TRL 7-9(量産・事業化段階)はものづくり補助金が適しています。Go-Tech事業は公設試連携が実質必須なので、連携先が確保できない段階ではSBIRで実績を作ってからGo-Techに進むルートも現実的です。

令和8年度のGo-Tech事業に不採択になった場合、翌年度に同じテーマで再申請できる?

同じテーマでの再申請は可能です。ただし申請書の文章だけ直して再提出する中小企業が最も多い失敗パターンです。公設試連携の体制を立て直す(担当研究員の異動確認、試験条件の再設計、使用設備の更新確認)ことが改善の本質で、再申請の勝負は申請書を書き始める前についています。

参考文献