「採択通知が来た!やった!」——その瞬間、うちのチームも全員でガッツポーズしましたよ。Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)、令和8年度の採択率43%、122社採択。狭き門をくぐり抜けた達成感は本物です。
でも、正直に言うと——採択はゴールじゃなくて、スタートラインです。交付決定が下りる前後の1か月で、研究着手が完全に詰まってしまうパターンが3つあって、これを知らずに突っ込んでいくと「補助金取ったのに何もできない」という最悪の状況になります。
うちで実際に取った時の話なんですけど、採択通知が来た翌日から動き出しているチームと、交付決定まで待ってから動き出すチームで、最初の2か月の研究進捗に3倍くらいの差が開くんです。今回はその3パターンを実例と対策込みで解説します。
パターン1:連携機関との「年間実施計画書」を交付決定後に初めて出そうとして詰まる
Go-Tech事業の公募要領を読み込んでいると、「連携機関との締結書類」について交付申請時に提出が必要なことがわかります。多くの採択企業がここで誤解するのは「交付決定が下りてから連携機関と話せばいい」という認識です。
現実はこうです。大学の研究室や公設試との連携で年間実施計画書を作る場合、相手方の決裁フローを通さないといけません。国立大学なら部局長の承認、公設試なら所長決裁が必要で、普通に進めると3〜4週間かかります。交付決定前から連携機関と協議を始めていないと、交付決定後にすぐ締結書類を揃えることができず、研究着手が1〜2か月後ろにずれ込みます。
うちで実際に取った時の話なんですけど、採択通知が来た翌営業日に連携先の大学教授に連絡して「採択されました、公式の手続きはこれからですが先に調整したい」と伝えました。向こうも「わかった、内部で動き出す」と言ってくれて、交付決定と同時に締結書類が完成していました。この翌営業日連絡が全体の流れを決めます。
対策:採択通知翌営業日に連携機関へ「先行連絡メール」を送る
テンプレで時短すると、メールは以下の3点だけ伝えれば十分です。①採択された事実、②公式の交付申請は○月頃の予定、③先行して年間実施計画書の内容を協議したい。これだけで連携機関側の内部調整が動き始めます。正式な契約は交付決定後ですが、内容の合意は先行して行えます。
パターン2:e-Radの研究員情報が実態と乖離して精算で引っかかる
e-Rad(府省共通研究開発管理システム)は、Go-Tech事業でも補助金申請・管理の基盤として使います。採択申請時に登録した研究員情報が、交付決定時点で実態と一致していないケースが意外に多い。
よくある失敗が「申請後に研究員が異動・退職した」パターンです。4月に申請して9月に採択通知が来るまでの5か月間に、研究員の所属や役職が変わっていることがあります。e-Rad上の情報を更新しないまま交付申請に進むと、精算時に「申請情報と実態が一致しない」として補助金の一部が認められないリスクがあります。
特に注意が必要なのは、研究員が他の補助金プロジェクトに従事している場合の「従事割合」です。e-Radには研究者の従事割合を記録する仕組みがあって、合計が100%を超えると問題になります。複数の補助金を並行して走らせている中小企業は、研究員のe-Rad情報を必ず採択通知後に棚卸しする必要があります。
対策:採択通知から2週間以内にe-Rad研究員情報を全員棚卸し
テンプレで時短すると、確認項目は4つ。①所属・役職の変更の有無、②他プロジェクトへの従事状況(従事割合の合計チェック)、③連絡先メールアドレスの有効性、④研究者IDの有効期限。これをスプレッドシートで一覧化して担当者ごとにチェックボックスを入れると、2〜3時間で棚卸しが完了します。
パターン3:公設試の試験設備が「3〜6か月待ち」で前半の研究期間が空白になる
Go-Tech事業の研究開発で公設試(都道府県の公設試験研究機関)の試験設備を使う場合、設備の予約が研究スケジュールの根幹を左右します。振動試験機、高温試験炉、EMC試験設備など、中小企業の自社では保有しにくい設備は公設試に集中しています。
問題は、主要な試験設備は常に予約で埋まっていて、申し込みから使用まで3〜6か月待ちが常態化していることです。交付決定が下りてから設備予約の相談を始めると、実際に試験できるのは研究期間の後半になってしまいます。Go-Tech事業は研究期間が概ね2〜3年ですが、初年度の前半6か月が試験設備の空き待ちで潰れると、研究の進捗管理が根本から狂います。
うちで実際に取った時の話なんですけど、採択通知が来た翌週に公設試の担当者に連絡して「まだ交付決定前だけど、設備の空き状況を確認したい」と相談しました。公設試の担当者も「交付決定前の正式予約は難しいけど、仮押さえの相談は受け付けている」と教えてくれて、内部での優先度調整をしてもらえました。
対策:採択通知から10日以内に公設試へ「仮押さえ相談」の連絡を入れる
テンプレで時短すると、公設試への連絡は電話が一番早いです。「令和8年度Go-Tech事業に採択されました、○○試験設備の使用を予定しているので、空き状況の確認と仮押さえの相談をしたい」これだけ伝えれば担当者につないでもらえます。正式な申請は交付決定後でも、意向の表明は今すぐできます。
採択通知〜交付決定の逆算スケジュール(R8年度モデルケース)
| 時期 | アクション | 担当 |
|---|---|---|
| 採択通知翌営業日 | 連携機関へ先行連絡メール送付 | 事業責任者 |
| 採択通知から1週間以内 | 公設試へ仮押さえ相談の連絡 | 研究担当者 |
| 採択通知から2週間以内 | e-Rad研究員情報の棚卸し・更新 | 事務担当者 |
| 採択通知から3週間以内 | 年間実施計画書の素案作成・連携機関との内容合意 | 事業責任者+連携機関 |
| 交付申請時 | 締結書類・e-Rad情報・設備予約確認書を揃えて提出 | 事業責任者 |
| 交付決定後即日 | 公設試の正式予約・連携機関との契約締結 | 各担当者 |
セルフチェックリスト:交付決定前にやっておくべき6項目
- □ 連携機関(大学・公設試等)に採択の旨を連絡したか
- □ 連携機関の内部決裁スケジュールを確認したか
- □ e-Radの研究員情報(所属・役職・従事割合)を最新化したか
- □ 他の補助金との従事割合が100%を超えていないか確認したか
- □ 公設試の使用設備と予約の見込みを確認したか
- □ 年間実施計画書の素案(内部用ドラフト)を作成したか
よくある質問(FAQ)
Q1. 交付決定前に連携機関と詳細な打ち合わせをしても問題ありませんか?
問題ありません。交付決定前の打ち合わせや内容協議は任意の活動として行えます。ただし、費用の発生を伴う業務委託や設備使用の正式契約は交付決定後に行う必要があります。内容の合意と事前調整は積極的に進めてください。
Q2. e-Radの研究員情報はどのタイミングで確定させる必要がありますか?
交付申請時点での情報が基準となります。採択通知から交付申請までの期間(概ね1〜2か月)に研究員の異動や退職があった場合は、交付申請前に必ず更新してください。更新漏れは精算時のリスクになります。
Q3. 公設試の設備予約は交付決定前でもできますか?
正式な予約申込は交付決定後が基本ですが、多くの公設試では「仮押さえ相談」や「使用意向の事前連絡」を受け付けています。公設試によって対応が異なるため、直接担当者に相談することをお勧めします。早めの相談が優先度向上につながります。
Q4. 年間実施計画書は自社で作成するのですか、それとも連携機関と共同で作成するのですか?
基本的には補助事業者(採択企業)が主体となって作成し、連携機関との合意内容を反映させます。連携機関の役割・担当範囲・実施時期を明確に記載する必要があるため、連携機関との事前の内容合意が必須です。
Q5. 採択率43%というのは高いのですか、低いのですか?
補助金としては比較的高い採択率です。ただし、Go-Tech事業は申請要件が厳しく(試験研究機関との連携必須、研究開発計画の審査など)、要件を満たした申請の中での43%です。実質的な競争倍率は見かけより高く、採択後の管理も重要です。





