「不採択だったか……。また来年だな」——そう思って半年間、気持ちの切り替えを優先していたら、いざ次の公募要領が出てから「あれ、準備できてない」と焦る。Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)では、不採択通知から次の公募開始まで約半年〜8ヶ月のウィンドウがあります。

令和8年度の公募は2026年2〜3月ごろ、採択結果は2026年夏ごろ。令和9年度は2027年2月前後の公募開始が想定されます。つまり今(2026年9月)から動き始めれば、半年の準備期間を丸ごと使えます。

公募要領を3回読んでみたら、審査員が最もシビアに見るのは「研究の継続性・進捗」だと分かります。ところが不採択後によく起きる3パターンの"停滞"が、半年後に一気に問題化する。本記事ではその構造を整理し、今すぐ動ける半年前チェックリストをお届けします。


【前提】Go-Tech事業の審査で"進捗"が重視される理由

Go-Tech事業の審査基準には「研究開発の実現可能性」が含まれており、e-Rad(府省共通研究開発管理システム)上の研究実績や公設試との連携実績が、実現可能性の証左として機能します。

令和8年度の採択率は43%(284件応募→122件採択)。競争は激しく、「昨年も申請した実績ある会社」と「初回申請の会社」が審査テーブルで並びます。前回不採択の企業が有利になる条件は一つ——前回より研究が前進していることです。

「うちで実際に取った時の話なんですけど」、採択年は公設試の実験データが3件新しく追加されていました。それだけで申請書の説得力がまるで変わります。


パターン1:e-Rad研究実績の「停滞」——審査員の目に映る"進捗ゼロ"問題

何が起きているか

e-Radは科研費・補助金申請時の研究者情報を管理する政府システムです。Go-Tech申請書には代表研究者のe-Rad登録内容(業績・学会発表・論文など)を添付または参照させる形式があります。

不採択後、研究者が「また申請するときに更新すればいい」と考えると、1年以上更新が止まります。審査員からすると「この研究者は昨年から何も進んでいない」と映ります。

なぜ停滞が長期化するか——リードタイムの罠

業績の種類公開・登録までのリードタイム今から手配しても間に合う期限
学会発表(国内)申込〜発表:3〜6ヶ月2026年10月末までに申込
査読付き論文投稿〜掲載:6〜12ヶ月2026年9〜10月に投稿
特許出願(公開)出願〜公開:約18ヶ月R9申請には基本間に合わない
技術報告書・社内資料作成次第即時今すぐ作成可能
e-Rad登録(学会発表後)発表後1〜2週間で登録可能発表後すぐに対応

論文は今から投稿しないと間に合わない、という事実に多くの中小企業は公募開始直前に気づきます。

半年前チェックリスト(e-Rad)

  • □ 代表研究者のe-Rad研究者番号を確認(失効・未登録チェック)
  • □ 2024〜2025年度の業績(学会発表・論文・報告書)をe-Radに登録済みか確認
  • □ 2026年秋〜冬の学会で発表できるテーマがあるか検討
  • □ 査読付き論文の投稿先を選定し、10月末までに投稿
  • □ 特許は「出願公開待ち」を申請書で補足説明できる形にしておく
  • □ 技術報告書(社内資料でも可)を1件作成・保管

テンプレで時短すると——e-Rad更新の確認作業は「研究者名で検索→最終更新日確認→1年以上前なら即アクション」の3ステップ。まずこれだけやってください。


パターン2:経営デザインシートの「放置」——昨年のデータのままで申請する危険

何が起きているか

Go-Tech申請書の根幹をなす経営デザインシート(内閣府・知財戦略推進事務局策定)は、「現在の事業モデル→将来のビジネス設計→そのための知財・研究開発戦略」を一枚にまとめたものです。

不採択になった申請書には「昨年作成した経営デザインシート」がそのまま流用されることが多い。しかし1年間で市場環境・自社の財務・競合状況は変わっています

放置が引き起こす3つのリスク

  1. 年度ズレ問題:「2025年〜2027年の計画」と書いてあるのに2026年に申請すると、「計画の1年目はもう終わっている」という矛盾が生じる
  2. 知識資産の未更新:取得した特許・ノウハウ・人材スキルが反映されておらず、「強みが乏しい」と評価される
  3. 競合・市場分析の陳腐化:業界の変化(新技術参入、規制改正など)が反映されず、「市場認識が古い」と指摘される

半年前チェックリスト(経営デザインシート)

  • □ 現在の経営デザインシートの「作成日」を確認(1年以上前なら要更新)
  • □ 「現在の事業モデル」欄:直近の決算・事業構成を反映しているか
  • □ 「将来の姿」欄:計画年度が申請年度に合っているか(年度ズレ修正)
  • □ 「知識資産」欄:R8年度に取得・強化した特許・ノウハウを追記
  • □ 「外部環境」欄:業界動向・競合・規制変化を2026年時点で更新
  • □ 支援機関(よろず支援拠点、中小機構)の確認を受けておく

うちで実際に取った時の話なんですけど、経営デザインシートの「知識資産」欄に新しい特許出願番号を1件追加しただけで、審査員の評価コメントが「研究の深化が見られる」に変わりました。小さな更新でも効果は大きい。


パターン3:公設試連携の「冬眠」——人間関係リセットで機器予約が取れない

何が起きているか

Go-Tech事業の要件の一つが公設試(公設研究機関・工業技術センターなど)との連携です。不採択後、「来年また申請するときに連絡すればいい」と関係を止めてしまうと、次の申請時に問題が起きます。

冬眠が引き起こす具体的な問題

  • 担当者交代:公設試の担当研究員が1年で異動することは珍しくない。関係がリセットされ、一から信頼構築が必要になる
  • 機器予約の取れなさ:大型分析機器(電子顕微鏡・引張試験機など)の予約は3〜6ヶ月待ちが通常。申請直前に予約しようとしても「2〜3月は埋まっています」と断られる
  • 連携計画の作り込み不足:申請書には「どの機器を使って、どんな実験を、いつやるか」の具体的計画が必要。関係が薄いと計画の精度が下がる

推奨する「3回ミーティング設計」

公募要領を3回読んでみたら、連携計画の具体性が審査ポイントになっていることが分かります。以下の3回ミーティング設計を推奨します。

回数時期目的確認事項
第1回2026年10月関係再構築・担当者確認担当者の継続可否、2027年2〜3月の予約状況確認
第2回2026年12月連携計画の具体化使用機器・実験手順の確認、連携証明書の様式確認
第3回2027年1月申請書レビュー依頼連携計画の記述内容を公設試担当者に確認してもらう

半年前チェックリスト(公設試連携)

  • □ 前回の連携先・担当者に「来年度の申請に向けて相談したい」と連絡(9月中)
  • □ 担当者の継続可否を確認(交代なら新担当者の紹介を依頼)
  • □ 2027年2〜3月の主要機器の予約状況を確認・仮予約
  • □ 第1回ミーティングを10月中に設定
  • □ 「連携証明書(連携機関確認書)」の様式・発行手順を確認
  • □ 前回の連携実績(実験データ・報告書)を整理・保管

テンプレで時短すると——「○○様、令和8年度のGo-Tech申請でお世話になりました▲▲株式会社の××です。令和9年度の申請に向けて、10月に一度ご相談させていただけますでしょうか」の一文メールでOK。難しく考えすぎないことが大事。


総まとめ:3パターン合計の半年前チェックリスト(2026年9月〜10月実施)

カテゴリアクション期限
e-Rad代表研究者のe-Rad登録・業績更新確認2026年9月末
e-Rad学会発表申込(秋〜冬の学会)2026年10月末
e-Rad査読論文の投稿2026年10月末
経営デザインシート作成日確認・年度ズレ修正2026年9月末
経営デザインシート知識資産・外部環境の更新2026年10月末
経営デザインシート支援機関による確認2026年11月末
公設試連携担当者への連絡・継続確認2026年9月末
公設試連携機器予約・第1回ミーティング2026年10月末
公設試連携連携計画具体化(第2回)2026年12月末

よくある質問(FAQ)

Q1. 前回と同じテーマで再申請していいのか?

A. 問題ありません。ただし「前回と何が変わったか」を申請書で明示することが重要です。研究の進捗(新データ・新実験結果)、経営環境の変化、計画の精緻化——この3点を具体的に書けば、再申請は「粘り強さの証拠」として評価されます。

Q2. 経営デザインシートは毎年更新しないといけないのか?

A. 義務ではありませんが、実質的には毎年見直しを推奨します。特に「将来の姿」の計画年度が申請年度に合っているかは必ず確認してください。古い年度のままで申請すると「計画が実施済み期間と重なっている」と指摘されます。

Q3. 公設試の担当者が変わっていた場合、連携証明書は取り直しか?

A. 担当者が変わっても、機関との連携自体は継続できます。新担当者に前回の経緯を共有し、連携証明書は新担当者の署名で取得してください。機関側は引き継ぎ資料があるため、一から説明する必要はない場合が多いです。

Q4. e-Radの研究者登録に費用はかかるか?

A. e-Rad自体の登録・利用は無料です。ただし所属機関(大学・研究機関)経由での登録が必要なケースがあります。中小企業の場合、「研究開発を行う法人」として事務局に直接登録できる場合もあるので、府省共通研究開発管理システムのサポートデスクに確認を。

Q5. 令和9年度の公募スケジュールはいつ確定するのか?

A. 中小企業庁の公式発表を待つ形になりますが、令和8年度の実績から推測すると2027年1〜2月の公募開始、3月末締め切りが想定されます。公募要領の事前公開(予告)が1〜2ヶ月前に出ることが多いので、中小企業庁・NEDO・よろず支援拠点のメルマガ登録を今のうちに済ませておくことを強くお勧めします。


参考文献・リンク

  1. 中小企業庁「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」公式ページ(令和8年度公募要領)
  2. 内閣府知財戦略推進事務局「経営デザインシートの手引き」(2024年改訂版)
  3. 府省共通研究開発管理システム(e-Rad)ポータルサイト「研究者向けガイドブック」