研究開発補助金って、1つの制度に採択されたらそれで終わりだと思っている中小企業がめちゃくちゃ多いんですけど、公募要領を3回読んでみたら、TRL(技術成熟度)の進行に合わせて制度を段階的につなぐ設計が見えてきました。
うちで実際に取った時の話なんですけど、最初にGo-Tech事業の公募要領を手に取ったのは知人の勧めでした。でも後からNEDO DTSUやSBIR制度の存在を知って、「自社のTRLからするとSBIRで概念実証の資金を先に確保すべきだった」と気づいたんです。この失敗から、TRL基準で制度をつなぐフレームワークを体系化しました。
なぜ「1制度だけ」では研究開発資金が途切れるのか
研究開発は要素技術の検証(TRL 1-3)→ 試作品の開発(TRL 4-6)→ 量産技術の確立(TRL 7-9)と段階的に進みます。各段階に対応する補助金制度は異なり、1つの制度でTRL 1から9までカバーすることはできません。
例えばGo-Tech事業の補助事業期間は最長3年。3年で試作品まで到達しても、量産設備の投資資金はGo-Techの対象外です。ここで資金が途切れると、せっかくの研究成果が死蔵されます。
段階的に制度をつなぐ設計があれば、研究開発の各フェーズで適切な資金を確保できます。
TRL基準の制度マッピング
| TRL | 研究段階 | 対応制度 | 助成上限(目安) | 申請ルート |
|---|---|---|---|---|
| TRL 1-3 | 概念実証・FS | SBIR制度(連結型・一気通貫型) | 1,500万円(フェーズ1) | e-Rad |
| TRL 4-6 | 試作品開発・実証 | Go-Tech事業 | 9,750万円(3年総額) | e-Rad |
| TRL 7-9 | 量産技術・設備投資 | 新事業進出・ものづくり補助金 | 1,000万〜3,500万円 | GビズID(Jグランツ) |
朝のカフェで公募要領を並べて読んでいて気づいたのですが、この3制度は申請ルートが2系統(e-RadとGビズID)に分かれています。制度未定の段階から両方を取得しておくのが鉄則です。登録は無料、ペナルティもありません。
接続パターン1:SBIR(概念実証)→ Go-Tech(試作品開発)
TRL 1-3の段階ではSBIR制度で概念実証(PoC)やフィージビリティスタディ(FS)の資金を確保します。SBIRで採択実績を作ると、Go-Tech事業の申請時に「技術的能力の裏付け」として使えます。
接続設計のポイント
- SBIRのフェーズ1終了後にGo-Techに申請するタイミングを逆算する(Go-Tech公募は例年2月〜4月)
- SBIRの研究成果をGo-Techの研究開発内容説明書に「予備研究の実績」として記載する
- 公設試連携はSBIR段階から構築を始める(Go-Techでは実質必須、名義貸しでは審査で見抜かれる)
- e-Radの研究者情報にSBIRの採択歴を追加しておく
注意点:SBIRとGo-Techで同一テーマを申請する場合、e-Radの不合理な重複排除チェックに引っかかるリスクがあります。タイトルを変えただけでは「実質的に同一の研究課題」と判定される可能性があるため、研究フェーズの違い(概念実証→試作品開発)を明確に書き分ける必要があります。
接続パターン2:Go-Tech(試作品開発)→ ものづくり補助金(量産設備投資)
Go-Tech事業で試作品まで到達したら、次は量産技術の確立です。新事業進出・ものづくり補助金の「革新的新製品・サービス枠」が接続先になります。
接続設計のポイント
- Go-Techの補助事業期間終了と、ものづくり補助金の公募時期を重ねる(新事業進出・ものづくり補助金の第1回は2026年8月31日〜9月30日)
- Go-Techの研究成果を技術面の革新性の根拠として使う(業界水準との比較3ステップが鍵)
- Go-Techの経費と、ものづくり補助金の経費は完全に分離する(同一経費の二重計上は絶対NG)
- 申請ルートがe-RadからGビズID(Jグランツ)に変わるため、GビズIDプライムの事前取得が必須
経費の分離ルール:Go-Tech事業で購入した試作用設備と、ものづくり補助金で購入する量産用設備は別物である必要があります。「試作で使った設備を量産にも使う」場合、ものづくり補助金の対象外になるリスクがあります。
接続パターン3:Go-Tech → NEDO DTSU(VC出資確保後)
VC・CVCからの出資が見込める場合は、Go-Tech事業からNEDO DTSUへの接続も選択肢に入ります。DTSUは助成額が数千万〜数十億円と桁が違いますが、VC出資要件(補助対象費用の1/3以上)があるためハードルは高い。
接続設計のポイント
- Go-Techの採択実績をVC交渉の材料にする(「国の審査を通った技術」は投資判断の裏付けになる)
- エンジェル投資や株式投資型クラウドファンディングはDTSUの出資要件の算定対象外
- DTSUの提案受付期間は約2〜3週間と短いため、Go-Tech終了の6か月前からVC交渉を開始する
段階的申請のスケジュール設計(逆算テンプレート)
- 制度未定段階(今すぐ):e-Rad登録(10営業日)+ GビズIDプライム取得(2週間)を同時に開始
- TRL判定:自社の技術がどの段階にあるか客観的に評価(公設試や産業技術総合研究所のTRL判定ガイドを参照)
- 第1制度の申請:TRL 1-3ならSBIR、TRL 4-6ならGo-Tech、TRL 7-9ならものづくり補助金
- 第1制度の補助事業期間中:次の制度の公募スケジュールを確認し、接続タイミングを設計
- 第1制度の終了6か月前:次の制度の申請準備を開始(経費分離・連携機関の構築・提案書骨格作成)
よくある質問(FAQ)
Q1. Go-Tech事業とものづくり補助金に同時に申請できますか?
A. 同時に申請すること自体は可能ですが、同一経費の二重計上は禁止されています。Go-Techは試作品開発、ものづくり補助金は量産設備投資と、経費を明確に分離する必要があります。また、同じ技術テーマでタイトルだけ変えた申請はe-Radの重複排除チェックで弾かれるリスクがあります。
Q2. SBIR制度からGo-Tech事業に接続する際、公設試連携はいつから始めるべきですか?
A. SBIR段階から始めるのが理想です。Go-Tech事業では公設試連携が実質必須であり、最低3回のミーティング(マッチング確認→試験条件設計→申請書共同レビュー)が必要です。公設試との関係構築には2〜3か月かかるため、Go-Tech公募開始の3か月前にはコンタクトを取るべきです。
Q3. e-RadとGビズIDの両方を取得する必要がある理由は?
A. SBIR制度とGo-Tech事業はe-Rad経由で申請し、ものづくり補助金はGビズID(Jグランツ)経由で申請します。段階的に制度をつなぐ場合、両方の申請ルートが必要になります。登録は無料でペナルティもないため、制度が未定の段階から両方を取得しておくのが鉄則です。e-Rad登録には約10営業日、GビズIDプライム取得には約2週間かかります。
Q4. Go-Techの採択実績はVC交渉でどの程度有利に働きますか?
A. Go-Tech事業は中小企業庁の審査を通過した技術であることを意味するため、VCの投資判断において「技術の実現可能性」を裏付ける材料になります。ただし、VC出資はGo-Techの採択だけで自動的に得られるものではなく、事業化計画の説得力や市場ニーズの根拠(TAM/SAM/SOM)が別途必要です。
Q5. TRLが上がったら前の制度で買った設備はどうなりますか?
A. Go-Tech事業やものづくり補助金で購入した設備には処分制限期間があります。補助事業終了後も一定期間は目的外使用・譲渡・処分に事前承認が必要です。次の制度で同一設備を転用する場合は、財産処分の手続きを確認してください。






