新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領が2026年6月29日に公開された。申請受付は8月31日〜9月30日。旧ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された新制度だ。

公募要領を3回読んでみたら、この新制度には旧ものづくり補助金の感覚そのままで申請すると「補助対象外」と判定される構造的な落とし穴が3つあった。特に「革新的新製品・サービス枠」と「新事業進出枠」の境界線を理解していないと、どちらの枠で出しても審査基準にハマらない中途半端な申請書が出来上がってしまう。

地場ベンチャー仲間の勉強会でも「旧ものづくり補助金第23次で不採択だった計画書を枠名だけ変えて出そうとしている」という話が複数出ている。それは危ない。今回は、第1回公募で枠選びを間違えて不採択になる3つのパターンを整理する。

パターン①|「既存製品のマイナーチェンジ」を革新的新製品・サービス枠で申請して補助対象外になる

革新的新製品・サービス枠の公募要領には、こう明記されている。「既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外」

旧ものづくり補助金では「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善」が一括で対象だった。しかし新制度では、生産プロセスの改善は革新的新製品・サービス枠の対象から明確に外された。つまり、既存の製造ラインの効率化や品質管理システムの更新は、この枠では通らない。

さらに、「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないもの」も補助対象外だ。設備を買い替えるだけの投資は、革新的とは認められない。

もう1つ見落としやすいのが地域普及要件。「同業の中小企業者等において既に相当程度普及している製品・サービスの開発」も対象外とされている。自社にとって初めてでも、同業他社で既に広く使われている技術の導入は革新性があると認められない。

旧ものづくり補助金との比較

項目旧ものづくり補助金革新的新製品・サービス枠(新制度)
生産プロセス改善対象対象外
設備導入のみ計画書次第で対象対象外
業界で普及済みの技術自社にとって新しければ可対象外の可能性
広告宣伝・販売促進費対象外新たに対象

逆に、革新的新製品・サービス枠では広告宣伝・販売促進費が新たに対象経費に追加された。開発から販路開拓までを一連のストーリーで計画に組み込めるようになった点は、研究開発型中小企業にとって大きな変化だ。

パターン②|「既存事業の延長線上の新製品」を新事業進出枠で申請して「新市場」要件で弾かれる

革新的新製品・サービス枠が合わないなら新事業進出枠か——と安易に考えるのが2つ目の落とし穴だ。新事業進出枠には「既存事業とは異なる新市場への進出」という固有の要件がある。

具体的には、①新たに製造・提供する製品等が自社にとって新規性を有すること、かつ②その製品等が属する市場が自社にとって新たな市場であること、の2つを同時に満たす必要がある。既存の取引先に対して改良版製品を売るだけでは「新市場」とは認められない。

朝カフェで公募要領を蛍光ペンで読み込んでいて気づいたんですけど、新事業進出枠は旧・新事業進出補助金(事業再構築補助金の後継)の性格を引き継いでいる。つまり、「事業転換の必然性」と「新市場の具体性」が審査で重視される。技術の革新性だけでは足りない。

一方で、新事業進出枠のメリットも大きい。補助上限が最大9,000万円(革新的新製品・サービス枠は3,500万円)、実施期間が14ヶ月(革新的新製品・サービス枠は10ヶ月)、さらに建物費が補助対象になる。新工場や新店舗を伴う事業転換であれば、新事業進出枠のほうが経費計画の幅が広い。

枠選びの判断フロー

  1. 既存製品の改良・既存プロセスの改善か? → 革新的新製品・サービス枠は対象外。省力化オーダーメイド枠を検討
  2. 新製品だが既存市場向けか? → 革新的新製品・サービス枠(上限3,500万円)
  3. 新製品かつ新市場への進出か? → 新事業進出枠(上限9,000万円、建物費対象)
  4. 海外市場の開拓か? → グローバル枠(上限9,000万円)

パターン③|従業員規模別の補助上限を確認せず経費計画が枠を超過する

新制度では従業員規模別に補助上限が再設計されている。革新的新製品・サービス枠の場合、旧ものづくり補助金のように一律の上限ではなく、従業員数で段階的に変わる。

従業員規模革新的新製品・サービス枠新事業進出枠
5人以下1,000万円4,500万円
6〜20人1,750万円6,000万円
21〜50人2,500万円7,000万円
51〜99人3,000万円8,000万円
100人以上3,500万円9,000万円

5人以下の研究開発チームだと、革新的新製品・サービス枠の上限は1,000万円にとどまる。旧ものづくり補助金第23次の一般型(上限1,250万円)よりも低い。少人数の研究開発型中小企業は、補助上限が下がる可能性があることを経費計画に反映する必要がある。

うちで実際に新制度の公募要領を読み込んだ時に最初に確認したのが、この従業員規模別の上限表だった。旧ものづくり補助金のテンプレで経費計画を作っていると、上限を超えた部分が全額自己負担になって資金計画が崩れる。テンプレで時短するとしても、この上限表だけは最初に確認してから計画を組むべきだ。

よくある質問(FAQ)

Q1. 旧ものづくり補助金で「革新的サービス開発」として採択された計画を新制度でそのまま使えますか?

そのまま使うのは危険です。旧ものづくり補助金では「生産プロセスの改善」も同じ枠で対象でしたが、新制度の革新的新製品・サービス枠では既存プロセスの改善は補助対象外と明記されています。計画書の内容が「改善」寄りなら枠自体を変える必要があります。付加価値額の年平均成長率要件も3.0%から4.0%に引き上げられているため、数値計画の見直しも必須です。

Q2. 革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠は同時に申請できますか?

同一事業者が複数の枠に同時に申請することはできません。1申請1枠です。どちらの枠が自社の事業内容に合うかを公募要領の対象事業の定義と照らし合わせて判断してください。迷う場合は、認定経営革新等支援機関に相談するのが確実です。

Q3. 広告宣伝・販売促進費は新事業進出枠でも対象ですか?

広告宣伝・販売促進費は革新的新製品・サービス枠のみで対象経費に追加されています。新事業進出枠やグローバル枠では引き続き対象外です。開発した新製品の販路開拓まで一連の計画に組み込みたい場合は、革新的新製品・サービス枠を選ぶ必要があります。

Q4. 申請受付の8月31日までに準備すべき事前手続きは何ですか?

最低限以下の3つを公募開始前に済ませておくことをお勧めします。①GビズIDプライムの取得(未取得なら約2週間)、②事業継続力強化計画の認定申請(認定まで約45日かかるため今すぐ着手)、③認定経営革新等支援機関の確認書の取得。パートナーシップ構築宣言と成長加速マッチングは即日・無料で取得可能なので、加点を取り逃さないよう早めに登録してください。

まとめ|枠選びの判断は「自社が何をしたいか」が起点

新事業進出・ものづくり補助金は、旧ものづくり補助金から名前が変わっただけの制度ではない。枠ごとに対象事業の定義・補助上限・対象経費・実施期間がまったく異なる。旧ものづくり補助金の計画書をコピー&ペーストで流用すると、枠の適用条件に引っかかって不採択になるリスクが高い。

補助上限の大きさだけで枠を選ぶのではなく、自社の投資内容が「新製品開発」なのか「新市場進出」なのか「生産プロセス改善」なのかを正直に見極めることが、枠選びの第一歩だ。第1回公募の申請受付は9月30日まで。公募要領を手元に置いて、まずは対象事業の定義を3回読み直すことから始めよう。

参考文献