2026年6月29日に新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領が公開されました。申請受付は8月31日〜9月30日。旧ものづくり補助金の第23次が最終回となり、いよいよ統合新制度のスタートです。

公募要領を3回読んでみたら、加点項目の構成が旧制度から大きく変わっていることに気づきました。旧ものづくり補助金第23次は全15区分の加点がありましたが、統合新制度では加点項目が再編され、成長加速マッチングサービスや事業承継関連の加点が外れる一方、新たな加点が加わっています。

問題は、この変化に気づかず加点項目ゼロで申請する中小企業が一定数出ること。うちで実際に取った時の話なんですけど、旧ものづくり補助金で最初に申請した際、加点を1つも取らずに出して不採択になりました。2回目に加点を全部取って再申請したら採択。技術面や事業化面の内容はほぼ同じだったので、加点の差がそのまま結果に出たと確信しています。

加点項目ゼロが不採択に直結する構造的理由

旧ものづくり補助金第23次の採択率は30%台まで低下していました。統合新制度の第1回公募も同水準の競争率が予想されます。採択率30%台の競争で加点ゼロは、自分から不利を選んでいるのと同じです。

加点項目は審査点の上乗せであり、申請内容の質が同程度なら加点の多い事業者が優先されます。とくに研究開発型の中小企業は、技術面の記述に時間を取られて加点の準備を後回しにしがちです。しかし加点は申請書の質とは独立した変数なので、準備さえすれば確実にスコアを積める領域です。

9月30日締切から逆算する「基本セット3項目+賃上げ加点」

新制度の加点項目のうち、研究開発型中小企業が第1回公募で現実的に取得できる項目を整理しました。朝はカフェで公募要領読みをするのが日課なんですが、取得期間と難易度で3段階に分けると見通しが立ちます。

【即日〜1週間】パートナーシップ構築宣言

パートナーシップ構築宣言は、「発注者の立場から取引先との望ましい取引慣行を宣言する」制度です。ポータルサイトからオンラインで登録でき、費用は無料。ペナルティもありません。

ただし注意点が1つ。令和8年1月1日に更新されたひな形での公表が条件です。旧ひな形で登録済みの事業者は、新ひな形で更新しないと加点が認められません。登録済みだから安心、ではなくひな形の更新日を必ず確認してください。

【約45日】事業継続力強化計画の認定

事業継続力強化計画(ジギョケイ)は、自然災害やサプライチェーン途絶に備えるBCP計画を経済産業大臣に申請して認定を受ける制度です。認定まで約45日かかります。

9月30日の申請締切から逆算すると、8月中旬が申請のデッドラインです。7月中に計画書の骨格を作り、8月上旬に申請を完了させるスケジュールが安全圏。計画書のページ数は10ページ前後で、ものづくり補助金の事業計画書に比べれば負荷は軽いです。認定の有効期間は3年間なので、第2回以降の公募にもそのまま使えます。

【2〜3ヶ月】経営革新計画の承認

経営革新計画は都道府県知事等の承認が必要で、計画書のボリュームは25〜30ページ。審査から承認まで2〜3ヶ月を要します。第1回公募(9月30日締切)に間に合わせるには、すでに着手している必要があります。

今から始めて第1回に間に合わない場合は、第2回公募以降の布石として動くのが現実的です。経営革新計画の承認を受けると、日本政策金融公庫の特別利率融資や信用保証の特例措置も使えるため、補助金の加点以外のメリットも大きい制度です。

【申請時の宣言】賃上げ加点

賃上げ加点は、基本要件の「給与支給総額の年率平均3.5%以上向上」を超える上乗せ分を表明することで得られます。自動付与ではなく、申請時に事業計画上の賃上げ見通しを宣言する必要があります。

ここで注意すべきは減点リスクです。中小企業庁所管の補助金で賃上げ加点を受けて採択され、要件を達成できなかった場合、未達の報告から18ヶ月間は大幅な減点措置が適用されます。研究開発フェーズで売上がゼロの期間がある場合、賃上げ原資の確保が構造的に厳しくなります。

公募要領を3回読んでみたら、賃上げ加点は「取れるなら取る」ではなく「3年間維持できるか」を先にPLでシミュレーションしてから宣言すべきだと気づきました。1人あたり年率3.5%を3年維持するには複利で約10.9%の賃上げが必要です。少人数の研究開発チームでは、1人の退職や入替で計画が崩れるリスクも織り込んでください。

旧ものづくり補助金の加点テンプレを流用する際の3つの落とし穴

旧ものづくり補助金の加点管理テンプレートをそのまま新制度に持ち込むと、以下の3点で齟齬が出ます。

  1. 成長加速マッチングサービスの加点廃止:旧制度では即日・無料で取れる定番の加点だったが、統合新制度では加点対象から外れている可能性がある。公募要領の加点一覧を必ず確認すること。
  2. パートナーシップ構築宣言のひな形更新要件:旧制度の登録で安心していると、新ひな形(令和8年1月1日版)への更新漏れで加点が付かない。
  3. 付加価値額の年平均成長率が3.0%→4.0%に引き上げ:基本要件そのものが変わっているため、賃上げ加点のシミュレーションも旧テンプレのまま使うと数字が合わない。

第1回公募に向けた逆算スケジュール(2026年7月〜9月)

時期アクション備考
7月上旬(今すぐ)パートナーシップ構築宣言の新ひな形で登録・更新即日〜1週間、無料
7月中旬事業継続力強化計画の計画書骨格を作成10ページ前後
8月上旬事業継続力強化計画を経済産業局に申請認定まで約45日
8月中旬賃上げ加点のPLシミュレーション(3年分)複利10.9%を維持できるか確認
8月31日申請受付開始事業継続力強化計画の認定が間に合わない場合は申請中でも可か事務局に確認
9月30日 18時申請締切厳守

よくある質問(FAQ)

Q1. 加点項目は何個取れば安全ですか?

A. 採択を保証する個数はありませんが、パートナーシップ構築宣言+事業継続力強化計画+賃上げ加点の3項目が現実的な目標ラインです。旧ものづくり補助金で加点ゼロ→3〜4項目取得で採択された事例は複数あります。

Q2. 事業継続力強化計画の認定が申請締切に間に合わない場合はどうすればよいですか?

A. 申請時点で「認定申請中」の場合の取扱いは公募回ごとに異なります。公募要領の加点項目の注記を確認し、不明な場合は事務局に問い合わせてください。間に合わない場合は第2回公募で加点を活かす戦略も有効です。認定の有効期間は3年間です。

Q3. 賃上げ加点を宣言して未達だった場合のペナルティは?

A. 中小企業庁所管の補助金で賃上げ加点を受けて採択され、要件未達だった場合、未達の報告から18ヶ月間は大幅な減点措置が適用されます。研究開発フェーズで売上ゼロの期間がある事業計画では、既存事業の利益から賃上げ原資を確保できるかPLで検証してから宣言してください。

Q4. 旧ものづくり補助金で取得した事業継続力強化計画は新制度でも使えますか?

A. 事業継続力強化計画の認定有効期間は3年間です。有効期間内であれば新制度の加点にも活用できます。ただし公募要領で認定日の要件が指定されている場合があるため、必ず第1回公募要領の加点項目の注記を確認してください。

Q5. 経営革新計画の承認は第1回公募に間に合いますか?

A. 経営革新計画は都道府県知事等の承認に2〜3ヶ月かかるため、7月時点で未着手の場合は第1回公募(9月30日締切)には間に合わない可能性が高いです。第2回公募以降を見据えて今から着手し、融資の特別利率適用なども含めた多面的なメリットを活かす戦略をおすすめします。

参考文献