旧ものづくり補助金になかった「広告宣伝・販売促進費」が使えるようになった
公募要領を3回読んでみたら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領(2026年6月29日公開)で、旧ものづくり補助金にはなかった「広告宣伝・販売促進費」が対象経費に追加されていることに気づきました。
これは研究開発型の中小企業にとって大きな変化です。従来のものづくり補助金では「開発はできるけど販路開拓は自腹」だったのが、革新的新製品・サービス枠では開発から販路開拓まで一連の経費計画を組み込めるようになりました。パンフレット制作、展示会出展、Web広告、動画制作——これらが補助対象になるわけです。
ただし、うちで実際に取った時の話なんですけど、新しい経費区分が追加されると必ず「使い方を間違える」パターンが出てきます。地場ベンチャー仲間の勉強会でも、第1回公募の申請準備を進める中で広告宣伝費の計上で悩む企業が増えています。間違いのパターンは大きく3つに集約されます。
パターン1:広告宣伝費の「経費配分上限」を計算ミスして差戻し
上限は「売上見込み額の5%」で計算する
広告宣伝・販売促進費には経費配分の上限が設定されています。計算式は以下の通りです。
上限額 = 事業計画期間内の総売上見込み額合計 ÷ 事業計画年数 × 5%
たとえば、事業計画で3年間の総売上見込みを9,000万円と設定した場合、年間平均売上は3,000万円。その5%で上限は150万円になります。
ここで中小企業がやりがちなのが、事業計画の売上見込みと広告宣伝費の整合性を取らないまま申請するパターンです。売上見込みを控えめに書いた結果、広告宣伝費の上限が想定より低くなり、見積もった広告費が上限を超えてしまう。あるいは広告費の上限を上げるために売上見込みを膨らませると、今度は付加価値額4.0%の賃上げ計算と噛み合わなくなります。
売上見込み→広告宣伝費上限→付加価値額の三角チェック
テンプレで時短すると、この三角関係の整合性チェックを見落としがちです。広告宣伝費を計上する場合は、以下の3つの数字が連動しているか確認してください。
- 事業計画の売上見込み:広告宣伝費の上限を決める起点
- 広告宣伝費の計上額:上限の5%ルール以内か
- 付加価値額の年平均成長率4.0%:売上見込みから逆算して達成可能か
この3つが一本の線でつながっていないと、経費計画の段階で差戻しになるか、審査で数値の整合性を欠いていると判断されます。
パターン2:「新事業進出枠」で広告宣伝費を計上して対象外判定
広告宣伝費が使えるのは「革新的新製品・サービス枠」だけ
ここが最も見落とされやすいポイントです。広告宣伝・販売促進費が対象経費として認められるのは「革新的新製品・サービス枠」のみです。「新事業進出枠」「グローバル枠」「省力化オーダーメイド枠」では、広告宣伝・販売促進費は対象外です。
旧ものづくり補助金の感覚で「どの枠でも同じ経費が使えるだろう」と思い込んでいると、枠を間違えた瞬間に広告宣伝費の数百万円が補助対象から外れます。
枠選びと経費設計は同時に進める
朝のカフェで公募要領を3色蛍光ペンで読み込んだ時に、枠ごとの対象経費の違いを一覧表にまとめました。特に注意すべきは以下の違いです。
- 革新的新製品・サービス枠:広告宣伝・販売促進費が対象。機械装置・システム構築費が必須経費
- 新事業進出枠:広告宣伝・販売促進費は対象外。新製品×新市場の2要件を同時に満たす必要あり
つまり、「新製品を開発して販路も開拓したい」なら革新的新製品・サービス枠、「新市場に進出する」なら新事業進出枠ですが、後者では広告費が使えません。経費計画に広告費を入れたいなら、枠選びの段階で革新的新製品・サービス枠を選ぶ必要があります。
パターン3:「対象外経費」の線引きを見落として経費否認
補助事業「以外」の広告は対象外
広告宣伝費が対象になるといっても、何でもかんでも広告費に計上できるわけではありません。公募要領では明確に対象外とされる経費があります。
- 対象外:補助事業以外の自社の製品・サービスの広告費
- 対象外:会社全体のPR広告に係る経費
- 対象外:マーケティング市場調査に係る経費
たとえば、補助事業で開発した新製品Aのパンフレットは対象ですが、既存製品Bも一緒に掲載された総合カタログは対象外になります。会社のコーポレートサイトのリニューアル費用も、補助事業のPR目的であっても対象外です。
ウェブサイト構築費は100万円以上で追加書類が必要
もう1つ見落としやすいのが、100万円(税抜き)以上のウェブサイト構築費を計上する場合のルールです。実績報告時に要件定義書または開発費用算出資料の提出が求められます。さらに、補助事業実施期間内にウェブサイトが公開されていることが条件です。
開発期間中に作ったランディングページが、補助事業期間の終了時点でまだテスト環境のままだと、この経費は認められないリスクがあります。
展示会出展費も「開催」が条件
展示会への出展費用も広告宣伝・販売促進費に含まれますが、補助事業実施期間内に展示会が開催されることが条件です。展示会の申込だけして実際の開催が補助事業期間外になる場合は対象外になります。展示会のスケジュールと補助事業期間を必ず突き合わせてください。
9月30日締切からの逆算:広告宣伝費を組み込む申請設計
第1回公募の申請受付は2026年8月31日〜9月30日です。広告宣伝費を経費計画に組み込む場合、以下の順序で準備を進めるのが現実的です。
- 7月中:枠選びの確定——広告宣伝費を使うなら革新的新製品・サービス枠を選択。新事業進出枠では使えないことを確認
- 8月上旬:見積もり取得——パンフレット制作・展示会出展・Web広告の概算見積もりを業者から取得。売上見込み×5%の上限内に収まるか確認
- 8月中旬:経費計画と売上計画の整合性チェック——広告宣伝費の上限・付加価値額4.0%・賃上げ3.5%の三角関係をシミュレーション
- 8月下旬〜9月:申請書作成——開発→試作→販路開拓の一連の計画として事業計画書に組み込む
よくある質問(FAQ)
Q1. 旧ものづくり補助金で採択された企業が追加で広告宣伝費を使えますか?
いいえ。旧ものづくり補助金(第23次以前)で採択された事業には、広告宣伝・販売促進費は対象経費に含まれていません。新たに広告宣伝費を使いたい場合は、新制度の革新的新製品・サービス枠で別の事業として申請する必要があります。
Q2. 広告宣伝費だけで申請できますか?
いいえ。革新的新製品・サービス枠では機械装置・システム構築費が必須経費です。広告宣伝費だけの申請はできません。開発のための設備投資と、その成果の販路開拓を一体で計画する必要があります。
Q3. 展示会の出展費用は全額が対象ですか?
展示会の出展料、ブース装飾費、配布物の制作費は対象になります。ただし、出張旅費(交通費・宿泊費)は広告宣伝費ではなく「運搬費」や対象外経費として整理されることがあるため、公募要領で確認してください。また、補助事業期間内に展示会が開催されることが条件です。
Q4. SNS広告やリスティング広告は対象ですか?
補助事業で開発した新製品・新サービスのPRを目的とするWeb広告は対象になり得ます。ただし、会社全体のブランディング広告や既存製品の広告は対象外です。広告の内容が補助事業の成果物に紐づいていることを明確にしてください。
Q5. 広告宣伝費の上限5%は補助金額に対する比率ですか?
いいえ。事業計画期間内の総売上見込み額合計を事業計画年数で割った金額の5%です。補助金額ではなく売上見込みが基準になります。売上計画を保守的に設定すると、広告宣伝費の上限も低くなる点に注意してください。






