結論から言うと、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)は、11月30日(月)17時が令和8年度の交付申請締切です。今日が10月21日なので、残りは約40日。しかも予算に達した時点で早期に締め切られる可能性があります。
スタートアップ専門の社労士として年100件超の助成金を見ていますが、このコースで詰まる会社は「申請書の書き方」ではなく「申請より前に整えておくべき労務の土台」で止まります。この記事では、締切までに確認すべき3パターンを整理します。
まず制度の骨格:何をすると助成されるのか
厚生労働省の案内によると、このコースは次の成果目標から1つ以上を選んで取り組むものです。
- 36協定(令和8年4月1日〜令和9年3月31日に有効なもの)の時間外・休日労働の上限を、月60時間以下、または月60時間超〜80時間以下に設定し、労働基準監督署へ届け出る
- 年次有給休暇の計画的付与制度を、対象の全事業場で新たに導入する
- 時間単位の年次有給休暇と、特別休暇(1種類以上)を新たに導入する
これに賃上げや割増賃金率の引上げの加算を付けることもできます。
| 項目 | 内容(厚労省ページ記載) |
|---|---|
| 申請期間 | 令和8年4月13日〜11月30日(月)17時 |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜当該年度の1月31日 |
| 補助率 | 3/4。常時使用労働者30人以下などの条件を満たし、必要額が30万円を超える場合は4/5 |
| 支給額 | 成果目標ごとの上限額の合計と、対象経費×補助率のいずれか低い額 |
上限額の具体的な金額は、交付要綱・支給要領で必ず確認してください。ここを私が丸暗記で書くのは危険なので、この記事では金額の断言は避けます。
パターン1:36協定が「新年度分」でなく、上限の設計もズレている
スタートアップでよくあるのが、36協定を「とりあえず届け出ている」状態のまま、助成金だけ検討するケースです。成果目標①は、令和8年4月1日〜令和9年3月31日に有効な36協定で上限を設定し、届け出ることが条件です。
- 協定の起算日が会社設立日や前年10月などで、対象期間とズレている
- 特別条項で月の上限を高く設定したまま、成果目標の水準に下げていない
- 労働者代表の選出が、管理職や会社指名になっている
対処は単純で、まず現行36協定の有効期間と上限時間を確認すること。そのうえで、実態の残業時間と照らして「下げても回るか」を判断します。現場が回らない上限を届けても、IPO労務監査で必ず指摘されます。助成金のために上限を下げるのではなく、3年後も説明できる上限を決めるのが筋です。
パターン2:年休の計画的付与を入れたいのに、就業規則と管理簿が空白
成果目標②③を選ぶ会社で多いのがここです。厚労省のページには、次の要件が書かれています。
- 対象の全事業場で、年次有給休暇の管理簿が整備されていること
- 労働者10人以上の事業場では、年休の時季指定に関する規定を就業規則に定め、申請前に労基署へ届け出ていること
スタートアップは従業員が10人を超えた頃に、就業規則が雛形のままになりがちです。計画的付与や時間単位年休、特別休暇を新設するなら、就業規則の変更と届出が先です。制度を先に整えてから申請する。この順番が崩れると、書類は揃っても要件を満たしません。
私が3週間でキャリアアップ助成金の就業規則を整備した案件でも、結局いちばん効いたのは「規程を整えたこと」自体でした。助成金は副産物です。年休制度も、採用時に説明できる福利として残るかで設計してください。
特別休暇を作るときの注意
特別休暇は「入れれば何でもよい」わけではありません。名称だけ付けて運用実績がない、取得条件が曖昧、といった制度は、支給申請で実態確認の対象になります。具体的な認められる種類と要件は、厚労省の最新の募集要項で確認してください。
パターン3:交付決定前に着手・発注してしまう
このコースの事業実施期間は交付決定日から1月31日までです。厚労省のページ上で「交付決定前の費用は対象外」と明記された一文は私の確認範囲では見つけられませんでしたが、実施期間が交付決定日起点で定義されている以上、決定前の発注・契約・支払は対象外として扱われる前提で動くのが安全です。最終判断は交付要綱で確認してください。
- 勤怠システムの導入契約を、申請前に結んでしまう
- 専門家へのコンサル契約を、交付決定前に締結・着手する
- 就業規則の改定費用を、先に支払っている
スタートアップは「まず動く」文化が強く、ここと相性が悪い。対策は、Slackに社労士チャンネルを作り、発注前に一度止めて確認するフローを入れることです。
締切40日の逆算スケジュール
| 期間 | やること |
|---|---|
| 10月21日〜10月末 | 36協定の有効期間・上限と、就業規則の年休規定を点検。成果目標を1つに絞る |
| 11月上旬 | 就業規則変更・届出(10人以上の場合)。見積書の取得。交付申請書の作成 |
| 11月中旬 | 管轄の労働局へ交付申請(余裕を持って)。予算消化による早期終了に備える |
| 11月30日17時 | 交付申請の最終締切 |
| 交付決定後 | 発注・導入・実施。実施期間は1月31日まで |
交付決定から1月31日までの期間は長くありません。決定後に動くことを考えると、締切ギリギリの申請は実質的に不利です。11月中旬の提出を目標にしてください。
この助成金を「やらない」判断もある
助成金単体の相談は基本的にお断りしています。理由は、労務の課題が見えないまま制度に合わせると、3年後に残らないからです。判断基準は3つ。
- 実際に残業や年休取得に課題があるか
- IPO審査で説明できる運用になるか
- 制度として毎年回せるか
全部に「はい」と言えないなら、今年の締切に無理に合わせる必要はありません。
よくある質問
Q1. 申請締切はいつですか?
厚労省のページでは、令和8年11月30日(月)17時と記載されています。予算がなくなり次第、早期に終了する場合があります。
Q2. 成果目標はすべて達成する必要がありますか?
いいえ。厚労省の案内では、成果目標①〜③から1つ以上を選んで取り組む形です。
Q3. 補助率はいくらですか?
原則3/4です。常時使用労働者30人以下などの条件を満たし、必要額が30万円を超える場合は4/5に引き上げられます。
Q4. 従業員10人未満でも使えますか?
就業規則の年休時季指定の届出要件は、労働者10人以上の事業場が対象と記載されています。10人未満の会社の細かな扱いは、交付要綱をご確認ください。
Q5. 交付決定前に発注した費用は対象になりますか?
実施期間が交付決定日から始まるため、決定前の発注は避けるのが安全です。最終的な扱いは交付要綱で確認してください。





